2022.12.07

グリスの洗浄方法は?洗剤の種類と目的ごとの選定ポイントについても解説

グリスの洗浄方法は?洗剤の種類と目的ごとの選定ポイントについても解説

グリスとは、工場や機械のパーツに用いられる潤滑剤です。機械の摩擦を軽減し、なめらかに動かすために用いられます。グリスの洗浄にあたっては、洗浄剤の種類と汚れの性質を把握することが大切です。

洗浄剤は主に7種類あり、引火性や油分溶解力などが異なります。また、汚れに関しても鉱物油や動植物油を含めて5種類あり、それぞれに適した洗浄剤、洗浄方法があります。また、設備投資やコスト、洗浄の対象物への影響などについても考えなければなりません。

この記事では、洗浄剤の種類と洗浄目的ごとの選定ポイントについて解説しています。また、グリスの使い方や管理についてもふれているので参考にしてください。

グリスとは?

グリスとは、潤滑剤のなかでも常温で半個体または個体のものを指します。基油と増ちょう剤、添加物などで構成されており、成分によってさまざまな種類に分かれます。

グリスに含まれる増ちょう剤によって、ベアリングやブッシュなど低速で荷重のかかる部分にも使用できますが、抵抗が大きい点はデメリットです。

潤滑油との違い

グリスと潤滑油の違いは、増ちょう剤が含まれているか否かです。潤滑油は液体のため浸透性が高く、スプロケットやチェーンなど高速で動く部分に適しています。

グリスを使用するときの注意点

グリスを使用するうえで注意すべきポイントは4つです。

グリスの混合に注意

種類の異なるグリスを混ぜて使用すると、グリスの持つ効果が低下する恐れがあります。グリスを補給するときは、必ず同じものを使用してください。

異物混入に注意

グリスのなかに異物が混入しないように注意してください。砂やゴミ、ベアリングに付着した汚れなどの異物は、混入を防ぐか事前に洗浄します。また、グリスの容器の蓋は必ず閉め、しっかり管理してください。

給脂量に注意

給脂の際は、必ず適正量を確認します。

例えば、転がり軸受に給脂するときの適正量は、軸受とハウジング空間の1/2から1/3です。ポイントは運転しているときにおこなうことと、補給グリスが排出され始めるまで給脂することです。

そして、どれくらいの量を使用したかについて記録を取ってください。前回と比較して、グリス漏れやグリスの不足をチェックするときに役立ちます。

集中給脂の際には規定量を守り、給脂した箇所から少量の漏れが発生しているかを目視で確認してください。

エアーの混入に注意

グリスにエアーが混入すると、給油ポンプの圧送不足や給油不足などの原因になります。ですから、給脂の方法にかかわらず気体混入は避けるべきです。また、グリスを管理するときも容器を横倒しにしてはいけません。

グリスを適切に管理する方法

グリスを適切に管理する方法を3つ挙げました。グリスの潤滑効果を保ち、発揮できるようにするためには日常的な管理が必要です。

屋内での温度管理

グリスは高温多湿を避け、冷暗所に保管してください。一般的に、70℃以上になるとグリスは劣化します。基油の酸化や増ちょう剤の持つ網目構造が破壊されるのが原因です。また、1度失われた機能は元に戻りません。

グリス漏れ

配管の接続部分やシールからグリスが漏れないように、必ず拭き取ってください。給脂したときにはみ出したグリスも同様です。拭き取ったグリスの色からは、異物や気体、水分などの混入状態も確認できます。

用途に合わせたグリスを選ぶ

グリスは増ちょう剤やちょう度が異なるため、用途に応じて適切なものを選んでください。また、滴点や使用最高温度、雰囲気や給脂方法なども考えるべきです

例えば、滑り軸受に使用するグリスなら、ちょう度番号1を基準とします。回転速度が大きい、または使用温度が低い場合は1ランク下げて、やわらかいグリスを使用してください。

工業用グリスの洗浄剤の種類

工業用グリスの洗浄剤は7種類です。それぞれ油分溶解力や引火性などが異なるため、シーンに合わせて使用してください。

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水系

引火性がなく、低コストな点はメリットです。金属への使用は腐食が懸念されるため、樹脂のものに使用してください。デメリットとして挙げられるのは、排水処理と乾燥の時間が必要なことです。

準水系

準水系は引火性が低く、油分溶解力が水系より高い点から、油汚れの洗浄に適しています。ただし、再生利用はできません。また、排水処理と防腐処理が必要です。

炭化水素系

炭化水素系は脱脂力、油分溶解力が高いため油汚れの洗浄に適しています。コストも安価で、蒸留再生が可能です。ただし可燃性が高い点から、設備に防爆対策が必要です。また、イオン性の汚れには適していません。

アルコール系

細かい部品や精密機器の洗浄に最適なのがアルコール系です。ただし引火性が高く、油分溶解力も低いのが難点です。

フッ素系

フッ素系は引火性がなく、乾燥性、浸透性に優れており蒸留洗浄ができます。プラスチックのほか、金属に使用したときもサビのリスクが低いのですが、コストがかかる点がデメリットです。

塩素系

引火性がなく、非常に高い油分溶解力を持つのが塩素系です。ですが、人体への影響が懸念されるため、使用の際は注意してください。

臭素系

細かい部分の油汚れには、臭素系が適しています。引火性はありませんが、コストが高く有害性もあるため作業環境や管理には十分な注意が必要です。

洗浄目的ごとの選定ポイント

洗浄する部品や目的に合わせた洗浄剤を選ぶことで、より効率的に汚れを分解、洗浄できます。以下、主な汚れの原因を5つ挙げました。

鉱物油系の汚れ

鉱物油系の汚れに適しているのは、準水系洗浄剤のなかでも石油溶剤を含むものです。ただし、鉱物油に含まれる酸化防止剤や、その他の添加物が残ることもあります。

動植物油系の汚れ

グリスや冷鍛用潤滑剤に使われている動植物油には、準水系洗浄剤またはアルカリ性の水系洗浄剤が適しています。実際に使うときは、油分の融点を超える温度で洗浄してください。

フラックスの汚れ

フラックスの洗浄には、準水系洗浄剤を使用してください。特に、はんだフラックスの溶剤成分と似ているグリコールエーテル系洗浄剤は群を抜いています。そのほかにはテルペン型も使えます。

粒子状または固形物質の汚れ

粒子状または固形物の汚れは物理的に除去するため、高圧洗浄もしくは超音波洗浄をおこなってください。洗浄剤は水系または準水系洗浄剤がおすすめです。ただし、粒子に含まれている油分についても考慮してください。

印刷インク

インク汚れを落とすときは、準水系洗浄剤を使います。ただし、対象物の素材のことも考えて選んでください。粒子状の汚れが多く付着しているときは、超音波洗浄もおこないます。

まとめ

グリスとは、機械の摩擦を軽減するための潤滑剤です。ベアリングやブッシュなど、荷重がかかり低速で動くものに効果を発揮します。

グリスを分解、洗浄するときは洗浄剤を使用します。洗浄剤には7種類あり、それぞれ除去に適した汚れは異なります。そのため洗浄剤を選ぶときはグリスの種類や汚れの性質、コストや設備投資など総合的に判断してください。

また、グリスは適切な管理と使用が大切です。異物や気体の混入は避け、冷暗所に保管します。給脂のときは適正量を確認して、記録をつけてください。

機械や部品が安全かつ快適に稼働できるように、適切な管理と洗浄を実施できればトラブルは回避できます。
 

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