酸性洗剤とは?洗剤の種類と用途、業務用と家庭用の違いを紹介!
洗剤を使用する時は、汚れ除去の用途に適した洗剤を選ぶ必要があります。洗剤と用途のマッチングを間違えると、簡単に除去できる汚れも除去できないからです。
また洗剤は使用場所により家庭用、業務用、工業用に分類されます。一般家庭の掃除や洗濯では中性洗剤と弱アルカリ性洗剤が主に使われます。しかし錆、水垢、尿石など特殊な汚れ除去には酸性洗剤が必要になります。
この記事では、酸性洗剤をはじめとする洗剤の種類や用途、業務用洗剤と家庭用洗剤の違いなどを紹介します。
目次
酸性洗剤とは
酸性洗剤とはpH6未満の洗剤のことで、「水系洗浄剤」の一種です。水系洗浄剤は酸性洗浄剤、中性洗浄剤、アルカリ性洗浄剤の3種類に分かれています。
またpHとは「水素イオン濃度指数」のことで、その液体の水素イオンの濃淡を示しています。pHは0から14までの数値で示され、pH7の中性を基準に、
- 0~6……酸性
- 8~14……アルカリ性
となります。また酸性はpH 値が0に近いほど「酸の濃度が濃い」、アルカリ性はpH値が14に近いほど「アルカリの濃度が濃い」ことを示しています。
洗剤の用途(種類別)
酸性洗剤・中性洗剤・アルカリ性洗剤の用途として、一般に次が挙げられます。
酸性洗剤
酸性洗剤は一般家庭では、
- トイレ……便器の尿石、水垢
- 浴室………洗い場の床・椅子・洗面器の水垢、石鹸滓、鏡の水垢
- キッチン…シンク内の水垢・石鹸滓、蛇口の水垢
- 洗面所……洗面器の水垢・石鹸滓
などの除去に適しています。
工業分野では金属の錆、スケール、酸化膜などの除去に用いられています。錆は金属の酸化、スケールは水の含有物であるカルシウム・マグネシウムが他の物質との融合で発生し、酸性洗剤で洗うと化学反応を起こして溶解します。
中性洗剤
中性洗剤は一般家庭では、
・食卓……………食品滓、調味料こぼし
・家具……………手垢
・床………………埃、食品滓、皮脂汚れ
・壁………………埃、くすみ、手垢
・食器……………油汚れ、食品汚れ、食べ残し汚れ
・調理家電………埃、油汚れ、手垢
・扉・ドアノブ…埃、手垢
・窓ガラス………埃、手垢
などの除去に適しています。
工業分野では精密部品の油脂汚れ除去に用いられています。
アルカリ性洗剤
アルカリ性洗剤は油脂汚れを加水分解し、酸とアルコールに変える性質があります。このため一般家庭では
・洗濯機………洗濯槽のカビ
・キッチン……換気扇・コンロ・グリル・壁の油汚れ、コンロやグリルの油・汁の焦げ付き、シンク・排水口のぬめり
・浴槽…………ぬめり、皮脂汚れ、湯垢
などの除去に適しています。
工業分野では切削油、加工油、研磨・切削粉、カーボンなどの除去に用いられています。
家庭用洗剤と業務用洗剤の違い
洗剤は用いる場所により、次の3種類に大きく分かれています。
- 家庭用……浴用石鹸・シャンプー等身体清拭用洗剤、衣類洗濯用洗剤、キッチン用洗剤、住居用洗剤など
- 業務用……ドライクリーニング用洗剤、ランドリークリーニング用洗剤、ハウスクリーニング用洗剤、エアコンクリーニング用洗剤、厨房クリーニング用洗剤、ビルメンテナンス用洗剤など
- 工業用……製造設備・装置、精密機械、電子機器、船舶・車両、冷却塔などの洗浄液
家庭用洗剤の場合は酸性洗剤もアルカリ性洗剤も、濃度が薄い「弱酸性(pH3~6)や「弱アルカリ性(pH8~10)」になっています。対して業務用洗剤の場合は濃度が濃い「強酸性(pH0~2)や「強アルカリ性(pH11~14)」になっています。工業洗浄液の場合も業務用と同じです。
家庭用洗剤と業務用洗剤の違いとして、一般に次が挙げられます。
洗浄力の違い
家庭用洗剤の場合は、弱酸性や弱アルカリ性なので洗浄力が低くなっています。これは一般消費者が使う洗剤なので、使用上の安全を担保するための措置です。例えば業務用や工業用と異なり、直接手で触っても火傷の恐れはないなどです。対して業務用洗剤の場合は、強酸性や強アルカリ性なので洗浄力が極めて高くなっています。
取扱いの違い
家庭用洗剤の場合は、開封すればそのまま(原液状態)使用できます。対して業務用洗剤の場合は、原液を希釈(薄める)して使用しなければならないので、開封してから使用するまでに手間・暇がかかります。希釈率は洗剤の種類により異なりますが、水で5倍から200倍に希釈してから使用するのが普通です。また「強酸・強アルカリ」と言う劇物を知り扱うので、希釈する際は専門的な取扱い知識も必要になります。
量の違い
家庭用洗剤の場合は、200ml、400ml、770mlなどの少量単位で売られています。この方が保管スペースを余り取らないので、便利だからです。対して業務用洗剤の場合は、基本的に18ℓ単位で売られています。業務用の場合は洗剤を大量に使うので、この程度のボリュームがないと不便だからです。
家庭における酸性洗剤と使い分け
洗剤を使用するときには、落とそうとしている汚れの性質に合わせて選ぶことが大切です。掃除などでは中性洗剤や弱アルカリ性洗剤がよく使用されていますが、特殊な汚れを落とす際に酸性洗剤が使われます。
酸性洗剤で落とせる家庭の汚れ
一般家庭で使われている洗剤の中では、トイレ用やお風呂場用のもので酸性洗剤が多いです。
トイレの掃除で酸性洗剤が必要なのは尿石を落とすためです。尿石はアルカリ性の成分が固まってできたものであるため、酸性洗剤を使用すると中和されて落としやすくなります。これに加えてアンモニア臭やタバコのニオイを消す効果もあります。
お風呂場では浴槽に水垢が発生するでしょう。排水口付近には石鹸カスなどが付着することも多いです。酸性洗剤を使うと、水垢や石鹸カスに含まれるカルシウムイオンが分解されて落としやすくなります。
また、トイレ用やお風呂場用の洗剤の中には中性のものもあるでしょう。中性洗剤でも尿石や水垢を落とせますが、酸性洗剤ほどの洗浄力はありません。その分だけ肌に優しく安全性が高いです。素地を傷めることも少ないため、汚れがあまり酷くないようであれば、酸性洗剤よりも中性洗剤を使う方がいいかもしれません。
酸性洗剤の例
ここでは、業務用の酸性洗剤の例として「ダイナミックデスケーラー」をご紹介します。
ダイナミックデスケーラーは、もともと工業用のスケール除去液として開発された製品ですが、その洗浄性能の高さ、作業性、取扱上の安全性の高さなどが評価され、今では汎用的な工業用洗浄液として、市場で高シェアを保持し続けている製品です。
関連ページ:ダイナミックデスケーラー(スケール除去液)商品紹介
その特徴として、次の3点が挙げられます。
- 取扱い上の安全性が優れている……pH1の強酸性洗浄液を取り扱う危険性から作業者の安全を守るため、独自開発の添加剤混合により強酸性の火傷リスクを極小化。
- 類似製品を寄せ付けないスケール溶解速度……類似製品に比べ、スケール溶解速度は5倍、金属腐食率は25%程度を実現。洗浄作業時間の大幅削減が可能に。
- 洗浄作業を大幅に省力化……類似製品の場合、金属表面の不導体皮膜剥離防止、洗浄後の中和・乾燥など洗浄作業は数工程を必要としていた。ダイナミックデスケーラーの場合は、洗浄後に水洗いするだけで溶解したスケールを除去。洗浄は2回(洗浄液+水洗い)で作業が終了の大幅省力化を可能に。
ダイナミックデスケーラーは主に次の用途で使用されています。
- 多管式熱交換器の洗浄……多管式熱交換器の場合、チューブは取り出して高圧洗浄できますが、チューブを内蔵する筐体は装置に固定されているので洗浄が極めて困難でした。ダイナミックデスケーラーは、筐体を装置に固定したまま洗浄できるので、熱交換器全体の洗浄を容易にしました。
- プレート式熱交換器の洗浄……プレート式熱交換器に用いられているステンレスやチタンの薄板は、強酸性洗浄液による腐食が発生しやすい部品の1つです。ダイナミックデスケーラーは、優れた洗浄力と金属低腐食率で同熱交換器の洗浄を容易にしました。
- 銅ブレージングプレート式熱交換器の洗浄……銅ブレージングプレート式熱交換器は、強酸性洗浄液を使うと長時間の洗浄で銅を溶解してしまうため、従来は洗浄が困難でした。ダイナミックデスケーラーは、銅の溶解度が極めて低いので洗浄を用意にしました。
- 銅チューブの洗浄……従来の強酸性洗浄液の場合、金属腐食を減らすため10倍希釈で洗浄するとスケールを除去できず、腐食だけが残るなどの問題があり、洗浄が困難でした。ダイナミックデスケーラーは、原液のままで銅チューブ内に堆積したスケールを短時間で除去するので、銅チューブの洗浄を用意にしました。
- 冷却塔のスケール除去……従来は、冷却塔の内部に足場を組み、手作業でスケールの掻き出し、スケール除去後に冷却塔の水洗い乾燥、足場撤去など、大掛かりで危険な作業が必要でした。ダイナミックデスケーラーは、冷却塔の天辺からダイナミックスケーラーをシャワーした後、水洗い用のシャワーをするだけでスケール除去が可能なので、従来の大掛かりで危険な作業を不要にしました。
- 古い配管内の錆・スケール・尿石除去……中古ビル・マンションの下水配管内には錆・スケール・尿石が堆積しています。従来のメンテナンスではこれらを何工程も費やして個別に除去していました。ダイナミックデスケーラーは、これらを1回の作業で除去できるので、メンテナンスの効率と省力化が飛躍的に向上しました。
関連ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介
関連ページ:プレート式熱交換器の仕組み
まとめ
洗剤は酸性、中性、アルカリ性に大きく分けることができます。また業務用と家庭用でも、洗浄力や量をはじめ性質が異なっています。
そのため使用するにあたって用途に合わせた製品を選び、推奨される使用方法を正しく守る必要があります。
どの製品を選ぶべきか迷った場合、まずは専門サービスに相談してみてはいかがでしょうか。