アルミニウムが腐食する原因は5つある!わかりやすく解説

アルミニウムは、軽量でありながら強度や耐食性に優れ、多くの産業で利用される金属です。特に、酸素と反応して形成される保護膜により、自然に腐食を防ぐ能力を持っています。
しかし、環境条件や異種金属との接触、化学物質への暴露など、特定の要因があると劣化が進み、その特性を損なうことがあります。そこで、アルミニウムの基本特性や腐食の原因、さらに対策についても詳しく解説します。
目次
アルミニウムとは?
アルミニウムは、豊富な金属元素であり、その優れた特性から多岐にわたる産業で広く使用されています。軽量でありながら強度があり、延性(引っ張ったときにどれだけ伸びるか)も高く、電気伝導性も持ち合わせています。
また、酸素に触れると表面に酸化アルミニウムの薄い保護層を形成し、腐食から保護する特性も持っています。この保護層は非常に硬く、容易にはがれることはありません。ただし、酸性またはアルカリ性の環境下や、他の金属との接触など、特定の条件下では腐食する可能性があります。
アルミニウムの特徴
アルミニウムは、軽くて丈夫で、錆びにくい特性を持つ便利な金属です。航空機や自動車、建築、電気製品など、私たちの生活のさまざまな場面で使われています。そこで、アルミニウムの特徴を詳しく解説します。
軽量
アルミニウムは、他の金属に比べて非常に密度が低く、同じ体積でも重量が軽いという性質を持っています。この軽量性は、特に重量を減らすことが重要となる用途で重宝しています。
例えば、航空宇宙産業では航空機の燃費向上につながり、自動車産業では車両の軽量化や燃費改善、運動性能向上などに役立っています。その他、製品の輸送コスト削減や設置作業の効率化にも有効で、経済的な利点が大きいです。
強度
純粋なアルミニウムは比較的柔らかい金属です。しかし、他の金属と合金化することで、大幅に強度を高めることができます。例えば、銅やマンガン、シリコン、マグネシウム、亜鉛などの元素と合わせることで、強度を向上させることが可能です。
このようなアルミニウム合金は、強度と軽量さのバランスから航空宇宙産業や自動車産業などの分野で使われています。
電気伝導性
金属の中でも比較的電気を通しやすい性質を持っています。特に軽量であることから、送電線や電子部品など、重量を抑えつつ電気を効率的に伝導する必要がある用途で活用されています。銅に比べると電気伝導率は劣りますが、その軽量さ、加工の容易さなどから、多くの場面で銅の代替としても採用されています。
また、アルミニウム合金の種類によっては、電気伝導性を損なわずに強度を高めることもできるため、用途に応じた最適な材料選択が可能という点でも便利な金属といえます。
アルミニウム腐食の原因
アルミニウムは錆びにくい金属ですが、湿気や塩分、他の金属との接触などによって腐食することがあります。知らないうちに劣化が進むと、強度が落ちたり、見た目が悪くなったりすることがあります。そこで、劣化する原因をわかりやすく解説します。
自然環境
自然環境によって、腐食が起こることがあります。特に、大気腐食は最も一般的なもので、湿気、塩分、温度変化、大気汚染物質などがアルミニウムの表面を攻撃し、腐食を進行させます。海岸に近い地域などで、塩分を含んだ霧や風があたるとよりいっそう腐食が進みます。
その他、酸性雨などによっても劣化します。アルミニウムの表面に形成された保護層を分解し、腐食を加速させるからです。このように、風向き、温度変化、降水量の変化など、こういった自然環境が影響します。
異種金属との接触
異種金属との接触によっても腐食が起こります。このことをガルバニック腐食といいます。
異なる金属が電解質(水分や塩分を含む環境)の中で接触すると、そこに電位差が生まれ電流が流れます。こうして、一方の金属が劣化しやすくなるのですが、アルミニウムの場合、他の金属より先に劣化が進みます。
化学物質への暴露
化学物質への暴露によっても腐食が引き起こされます。アルミニウムは両性金属で、酸性およびアルカリ性の両方の物質と反応する可能性があります。
特に、pH値が4〜9の範囲外の環境では、表面に形成される保護層が分解され、劣化が起こりやすいです。特に、強アルカリ性の環境は、酸性環境よりも速く侵食が進みます。
隙間に水分が溜まる
材料の重なりや設計上のミスによって生じた隙間に、水分が溜まることで腐食が発生することがあります。特に、海水が隙間に侵入すると溶解し、水酸化アルミニウムが形成されます。この過程で、隙間内部が酸性化し、急速に劣化が進みます。
例えば、ボルトと構造物の間の小さな隙間などでも、このようなことが起こることがあります。そのため、水が溜まりやすい箇所を避け、排水を促す設計にすることが重要です。
塗料のはがれ
塗装がはがれた箇所から腐食が始まることがあります。特に、塗装の下に傷がある場合、そこから水分や汚染物質が浸入し急速に劣化しやすいです。
アルミニウムが腐食したら元に戻るのか?
アルミニウムは、酸素と反応して表面に薄い膜を形成します。この膜は非常に硬く、アルミニウムを保護するのに役立ちます。
しかし、腐食が進行し、膜の自己修復が追いつかない場合は、完全に元の状態に戻ることは難しいです。そのため、初期段階であれば、膜の自己修復によって影響が最小限に抑えられる可能性がありますが、進行した場合は、元の状態に戻すことは困難です。
アルミニウムの腐食対策
ここでは、腐食対策として代表的なものを解説します。アルミニウムの特性をよく理解したうえで、実施することをおすすめします。
適切な合金を選択
用途や環境条件に合わせた適切な合金を選択することが重要です。合金にはさまざまな種類があり、それぞれに特性が異なります。そのため、使用環境や目的に最適な合金を選ぶようにしてください。
例えば、1000系(純度が非常に高い)合金は柔らかく、耐食性に優れているため、食品加工や化学工業での使用に適しています。一方、海洋環境では、5052系合金(純度が低目)が推奨されます。
これは、強度が高く海水による腐食に強いためです。このように、用途に応じて適切な合金を選択することで、リスクを大幅に減らすことができます。
保護コーティングの適用
粉体塗装や陽極酸化処理をすることで劣化対策となります。粉体塗装は、樹脂と顔料の混合物を高温で硬化させることで、耐食性や耐久性に優れたコーティングとなります。また、陽極酸化処理は、アルミニウム表面に自然な保護膜を形成し、耐食性の向上につながります。
環境制御
環境を制御することで腐食を抑制できます。特に、湿気や塩分、大気汚染物質などは劣化の主な要因です。そのため、アルミニウム部品や製品を保管する際には、温度と湿度が管理された環境に保管することが大切です。
湿度の高い環境では、表面に水分が凝縮し劣化が進みます。また、塩分はアルミニウムの保護膜を破壊し、劣化を加速させるため、海に近い地域は特に注意が必要です。
その他、大気汚染物質も注意が必要です。汚染物質は金属の表面に付着し、化学反応を引き起こし、劣化を進めます。このように、アルミニウムを保護するには、特定環境への曝露を最小限に抑えることが必要です。
定期的なメンテナンス
定期的なメンテナンスも重要です。金属表面に付着した汚れや塩分は、水分を保持し劣化させる原因になります。定期的な洗浄をおこなうことで、原因となる物質を除去し、進行を抑制できます。
ただし、洗浄には中性または弱アルカリ性の洗剤を使用してください。金属表面を傷つけることなく、効果的に汚れを落とすことができるからです。
万が一、表面に傷や塗膜のはがれが生じた場合は、早めに補修するようにしてください。傷ついた箇所から水分などが侵入しやすくなり、劣化が広がる可能性があります。
製品設計に注意する
製品は水が溜まりにくいよう設計してください。水が溜まると、塩分や汚染物質が蓄積しやすく、腐食を促進するからです。例えば、ボルトや構造材の接合部など、隙間ができないように設計します。設計上の工夫は、アルミニウム製品の耐久性を高め、劣化のリスクを低減するために重要です。
まとめ
アルミニウムは、優れた耐食性を持つ金属ですが、環境や使用条件によっては劣化が進行することがあります。特に、湿気や塩分、異種金属との接触、塗装のはがれなどが主要な原因です。
適切な合金の選択や保護コーティングの適用、環境管理、定期的なメンテナンスなどに取り組み、寿命を延ばし、性能を維持することが大切です。
関連ページ:超高効率オールアルミプレート式 排ガス熱回収専用設計熱交換器
アルファラバルの熱交換器やヒートポンプによる排熱利用と省エネならMDI TOPへ戻る