クーラーの原理は?効きが悪くなる原因は?
室内を冷やすクーラーは、快適に過ごすための機械ともいえるでしょう。暑い時期や高温処理を行う工場などに欠かせず、今や欠かせない家電のひとつです。
クーラーはどのような原理で動いているのでしょうか。
よく似た機械にエアコンがありますが、クーラーと何が違うのでしょうか。
今回は、クーラーの仕組みや歴史、効きが悪くなる原因など、基本を詳しくわかりやすく解説します。
目次
クーラーとは
クーラー(cooler)は空調機器のひとつで、冷房機能のみを備えた装置のことです。
室内の空気を圧縮し、熱を取り除くことで室内を冷やしています。この過程で室内の水分が取り除かれることから、ただ室内を冷やすだけでなく、除湿する効果も期待できます。
クーラーとエアコンの違い
クーラーとよく似た機能を持つ機械にエアコンがありますが、この2つには明確な違いがあります。
エアコンは冷房と暖房の両方の機能を搭載した機械で、「エアーコンディショナー」の略称です。対してクーラーは冷房機能のみを搭載した機械のこと。エアコンとクーラーでは、搭載機能が異なるのです。
ただし慣習として、エアコンのことをクーラーと呼ぶ場合があります。これはクーラーがエアコンよりも早い時期に広まったことが背景にあるといえるでしょう。エアコンが出始めた当初は名称自体が広まっていなかったため、クーラーと混同して呼ばれていた時代がありました。今でもエアコンをクーラーと呼ぶ方がいるのは、その時代の名残です。
関連ページ:熱交換器が活躍!エアコンの冷暖房の仕組み
クーラーの歴史
現在の形に近いクーラーが開発されたのは、100年近く前のことでした。1902年、印刷工場の湿度調節のために造られた「電気式エアーコンディショナー」です。
1906年には世界初の噴霧式空調装置が生み出されました。これは、水を加熱・冷却することで過失と除湿を行う、現在のエアコンの仕組みに近いものです。この後、加湿と換気を組み合わせて内部の湿度を制御・調節するシステムである「エア・コンディショニング」が生まれました。
ただし当初のエアコンは、冷媒ガスにアンモニアやクロロメタン、プロパンガスなど、有害な物質や可燃性の高いガスを利用していました。のちにフロンなどの人体に安全な冷媒が開発されたことで、現在のクーラーとほぼ同じ仕組みのクーラーやエアコンがうまれたのです。
さらに改良や小型化が行われ、現在のように、家庭でもよく使われる家電のひとつとして受け入れられたといえるでしょう。
クーラーの種類
クーラーには、さまざまな種類があります。中でも日常でよく見かけるのが、以下の5つです。
- 壁かけ
- 窓用
- 床置き
- 天井埋め込み
- スポットクーラー
家庭用クーラーに多いのが、壁かけ用や窓用です。名前のとおり、壁や窓に設置します。壁かけタイプは室内機と室外機がセットになっており、それぞれの機器をパイプでつないで利用します。設置には専用の資格と技術が必要です。
窓用は室外機と室内機が一体になっているため、室外機が必要ありません。安価で購入でき、設置に特別な資格もいらないため、手軽に導入できます。
床置きタイプは室内機を床に設置するタイプで、人がいる場所に効率よく空気を送れます。コンパクトで、置くスペースがあまり取れない場合でも使いやすいです。天井埋め込みタイプは天井にエアコン本体を埋め込むタイプで、工場やオフィスなどで利用されています。
スポットクーラーは、主に熱気がこもりやすい工場内作業中に使われるタイプです。冷房効果が高く、狭い範囲の空気を冷やすのに使われています。便利ですが、排熱処理に注意する必要があります。
クーラーの仕組み
さまざまなところで活用されているクーラーですが、どのような仕組みで空気を冷やしているのでしょうか。一般的な壁かけタイプの動きを通してクーラーの動きを確認しましょう。
- スイッチを入れると室内機の熱交換機が動き、液体状の冷媒ガスに熱を集める
- 熱により蒸発した冷媒ガスはそのまま室外機の圧縮機へ送られる
- 高温・高圧で気体になった冷媒ガスは室外機の熱交換機へ送られ、熱を排出する
- 熱を排出した冷媒ガスは液体になった状態で室内機へ送られる
- 室内機の熱交換機に送られた冷媒ガスは冷たい空気を排出しつつ、1の動きに戻る
クーラーでは、物質は気体になるときに周囲の熱を奪い、液体になると熱を放出する現象を利用しています。冷媒ガスが液体と気体に変化することで、熱を吸収・放出、室内を冷却することができるのです。
クーラーの排水について
一般的に、設置されたクーラーからは、ホースが伸びています。これは、室内機に発生する結露を排出するためのものです。
室内機に入り込んだ空気が冷やされると、液体となり熱を放出します。熱は冷媒ガスに吸収されますが、空中の水分は排出されないとクーラーの中に残ってしまうのです。
この現象を避けるため、クーラーには結露を排出するためのドレーンが付いており、使用中は水が排出される仕組みになっています。
クーラーの効きが悪くなる原因
クーラーの効きが悪いときは、故障や不具合が発生しているかもしれません。ここでは、クーラーの効きが悪くなる代表的な原因について解説します。
部品の不調
クーラーは空気を圧縮・減圧して空中の熱を排出しています。この機能が壊れると、クーラーのスイッチを入れても冷たくなりません。見た目には何の問題もないのにいつまでも涼しくならない場合、空気を圧縮・減圧する部品が故障しているかもしれません。
また、圧力を変更するための部品が壊れていなくても、室内機や室外機のセンサーが壊れている場合も、同じような状態になります。
クーラーには室内の温度や熱交換器の温度を検知するセンサーが付いています。このセンサーが反応することで、室内を適切に冷やすことができるのです。このセンサーが壊れると、クーラーを入れても反応しないまたは冷えすぎてしまうなどのトラブルが発生します。
このような状態になった場合、部品交換をしない限り修理できません。専門家による修理または買い替えが必要です。
室外機周辺の環境による影響
壁かけ用などについている室外機は、熱を逃がす役割を果たします。しかし、以下のような状態にあると、うまく熱を逃がせない状態に陥ってしまうのです。
- 室外機に直射日光が当たる
- 近くに熱を排出する設備がある
室外機本体やその周辺の温度が高いと、うまく熱が排出されなくなります。結果、機能が低下してしまうわけです。
ほかにも、室内機と室外機を結ぶパイプも適切な長さを保っていないと、室内機・室外機に異常がないのにクーラーの効きが悪くなります。
クーラーに取り付けるパイプは、延長できる長さが規定で決められています。規定より長いパイプは、故障の原因にもつながりやすいです。機能を正しく維持するためにも、設置の際に関わる規定はきちんと守る必要があります。
冷媒や掃除不足
冷媒ガスは基本クーラーの外に漏れだすことはほとんどありません。しかし、以下のような異常が発生していると、外部に漏れることがあります。
- 冷媒の経路にひび割れや穴がある
- 取り付け工事のミス
- 初期不良品
クーラーの機器やホースが劣化すると、ひび割れや穴が開くことがあります。これにより、冷媒が漏れてしまうことがあるのです。長い間使い続けている場合は、注意が必要でしょう。
また、取り付け工事の際にパイプと機器をつなぐ部分にミスがあった場合や、ごくまれですが冷媒が足りない初期不良品が原因のときもあります。この場合、冷媒の補充と修理で対応します。
また、家庭でよくある原因が、室内機・室外機の汚れです。室内機と室外機には熱交換器が搭載されています。この熱交換機が汚れると、熱の吸収・排出がうまくいかなくなるのです。クーラーはこまめに掃除しましょう。
まとめ
クーラーは家庭だけでなく、工場などでも採用されている機器です。複雑な仕組みでできており、さまざまな原因で故障することがあります。正しくメンテナンスや修理をするには、クーラーが熱を交換する仕組みを理解しておくことが大切です。しっかり理解しておきましょう。
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