2023.12.24

腐食とは?メカニズムと対策を解説

腐食とは?メカニズムと対策を解説

金属は、私たちの生活に欠かせない物質です。自動車や電車、街中の建物、電気を運ぶ電線など、至るところで使用されています。

そのデメリットのひとつとして挙げられるのが、「さび」などの腐食が起きることで、もろくなったり、見た目が悪くなったりと、金属の機能が著しく低下します。よって金属製品では、定期的なメンテナンスや、抑制する防食の実施といった腐食への対策が求められます。

この記事では、腐食のメカニズムや、防ぐための対策を解説します。

腐食とは

腐食とは、金属が周囲環境と化学的に反応し、元の材料と異なる物質に変化したり、表面が減肉したりして、劣化する現象のことをいいます。

過度に進むと、金属が減肉し穴があいて、物質の機能や外観が損なわれます。例えば、金属の配管にさびが生じ、穴があくと、その箇所から液体が漏れ、配管の役割を果たさなくなります。また、建物の材料として使用している金属に腐食が起こると、建物の強度自体が下がってしまうこともあります。このように、金属腐食が致命的問題を引き起こすこともあります。

腐食が起こるメカニズム

腐食のメカニズムは、金属の化学結合で説明可能です。

金属は、大気中の酸素によって表面に酸化結膜を形成しています。雨水、酸素、汚染物が金属表面に付着し、この酸化結膜が、破壊されることが要因です。その後、表面から内部へ進行していきます。

例えば、鉄から赤さびが発生する現象の場合。鉄が水に浸かると、鉄の表面から鉄イオン(Fe2+)と自由電子の(e-)が放出されます。自由電子は水(H2O)と水に含まれている酸素(O2)と反応し、水酸化物イオン(OH-)が生成されます。水酸化物イオンと鉄イオンが結合し、酸素と反応した結果、赤さび(Fe2O33H2O)が生成されます。

このように大半の腐食は、鉄が、水と酸素と反応することによって起こります。

腐食しやすい金属と腐食しにくい金属

金属にも腐食しやすいものとしにくいものがあります。鉄は腐食しやすい金属の代表格です。水と酸素があれば簡単に腐食します。

一方、金は銀、プラチナなどの貴金属は腐食しにくい金属です。これらの貴金属は分子構造が安定しており金属イオンが溶け出しにくいので、特別な環境でなければ、さびることはまずありません。

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金属腐食の種類

金属腐食にもさまざまな種類があります。ここではそのさまざまな種類を説明します。

乾食と湿食

金属腐食は、乾色と湿食に分けられます。

乾色とは、水等の液体が関与することなく金属が周囲のガスと反応して腐食が進行する現象のことをいいます。例として、鉄製のフライパンの黒さびがあげられます。鉄が高温になり、表面の酸化によって生じた酸化物です。

湿食とは、水などの湿気が関与し腐食が発生することをいいます。例えば、水と反応して生じる赤さびのように、私たちの周りで起こる腐食の多くは湿食から発生しています。

黒さびと赤さびとは、その構造が大きく異なっています。

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全面腐食と局部腐食

金属腐食は、腐食の仕方により、表面全体がほぼ一様に腐食する全面腐食と、金属が局部的に腐食する局部腐食に分けられます。全面腐食の進行のほうが、局部腐食よりも緩やかに進む傾向です。

局部腐食が起こる要因には、金属表面で、条件が不均一な状態になるなど、特定の条件が揃ったときに、表面に電位差が生じて腐食電池が形成されます。この腐食電池の電極がアノード部とカソード部に分かれます。この際、アノード部のみ腐食して、局部腐食が起こるのです。

孔食

孔食とは、水分のある環境に金属がさらされ、表面の腐食の大きさの割に、深く進行した状態のことをいいます。特に、ステンレス鋼やアルミニウム合金などの、耐食性の高い金属で発生する腐食です。

ステンレス鋼の表面を保護している酸化結膜が破壊され、湿気を有する環境で起きます。表面下の金属部が電子イオンを失いやすい状態になると、この電子化学反応によって空洞または「くぼみ」が発生します。

一般的に孔食は、目視検査を実施すれば、発見できますが、まれに「くぼみ」が深くなり穴があいてしまうことも考えられます。局部腐食の一種となるため、全面腐食と比較すると腐食量は少ないですが、使用されている配管や貯蔵容器に1箇所でも起こると、運搬物・貯蔵物の漏れなど重大な事故が起こってしてしまう可能性があるため、早期発見が望ましいです。

すき間腐食

すき間腐食も孔食同様に、ステンレス鋼に表面の酸化結膜が破壊されることで発生する局部腐食です。

孔食との違いは、腐食が生じる場所です。

すき間腐食は、その名のとおりすき間で生じる傾向にあります。ボルトで締結した部分や、配管のクランプで連結・溶接した部分など、すき間が存在している箇所で発生しやすくなります。

粒界腐食

粒界腐食とは、金属の結晶粒界で起こる局部腐食の1種で、ステンレス鋼にも生じます。

結晶粒界に沿って腐食が進み、過度に進行した場合は結晶粒が脱落します。

腐食の防止方法

発生すると重大な事故にもつながりかねない金属腐食。金属の腐食を防止することを防食といいます。

ここでは、金属の表面処理を中心に、防食の方法を紹介しましょう。

塗装

塗装とは、樹脂を主成分にした塗膜を金属材料の表面に塗布する表面処理のことです。金属表面を塗膜で覆うことで防食の機能を付与できます。

塗装は常温で、処理でき、大きさや形状にもほとんど関係なく処置できるので、広く実施されている表面処理です。

めっき

めっきとは、薄い金属の膜を表面に加工することをいいます。塗装同様に、表面処理の1つですが、塗料を塗膜にする塗装とは異なり、素材の表面をめっきと呼ばれる薄い金属で覆う処理を行います。

防食だけでなく、製品の見た目が美しく仕上げ、劣化や摩耗の防ぐ効果も期待できます。

腐食抑制剤

腐食抑制剤とは、金属腐食を抑制する物質のことです。

古くからさび止めとして、腐食抑制剤として油が使用されてきました。現在では、抑制効果を付与された油もあります。

化成処理

化成処理とは、化学的な方法で金属の表面に非金属の皮膜を形成する処理のことです。金属の表面と化学反応を起こして、耐食性を向上させます。

塗装の下地処理など元々の金属に足りなかった材質を付与することで実施可能です。

腐食の予測

最近では、収集した大量のデータを用いて、腐食する時期を予測できるようになってきました。日本のインフラ設備は高度経済成長期に作られたものが多く、老朽化が進んでいます。

現在まで、インフラ設備は検査員が現地で検査することが一般的でしたが、この検査には、経験が必要で、検査員の不足が問題点となっています。

しかし、腐食の予測ができれば、検査の負担が大幅に軽減ができ、データを数値化して腐食具合を定量的に評価できるようになります。

今後腐食の予測が一般的になれば、収集したデータが増加するため、さらに精度の高い予測が期待できます。

まとめ

腐食とは、周りの環境と化学的に反応して、元の材料と異なる物質に変化したり、表面が減肉したりしていく現象のことです。腐食が起こると、その商品や部品は使用できなくなるばかりか、最悪な場合、腐食が原因となり重大な事故が起こりかねません。

水などの液体が関与して起こる湿食、水が関与することなく起こる乾食など、腐食はさまざまな種類に分類でき、金属の種類や使用方法などによって発生するものが異なります。

また、発生を抑える防食方法にも、さまざまなものがあります。現在使用している金属の形状や環境などによって有効な方法は異なりますので、状況に合ったものを実施するようにしましょう。

 

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