2024.08.02

脱炭素社会とは?課題や実現への取り組みまとめ

脱炭素社会とは?課題や実現への取り組みまとめ

脱炭素社会とは、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素の排出を、実質的にゼロにする社会のことです。

このまま二酸化炭素が増え続けると、地球の気温が高くなり、人類が住めなくなる可能性が高くなると警鐘が出されており、対策が必要です。そのため、多くの国では2050年までに脱炭素社会の実現を目指し、さまざまな取り組みが行われています。

本記事では、脱炭素社会についてなぜ必要なのかと、カーボンニュートラルとの違いや日本の課題や取り組みなどもわかりやすく紹介します。

脱炭素社会とは?

脱炭素社会は、人類の活動による二酸化炭素排出を実質的にゼロにする社会を指します。完全な排出ゼロは困難なため、排出削減と回収のバランスを取る方針が採られています。以

前の低炭素社会から脱炭素社会へと目標が変更されたのは、気温上昇を抑制し、地球の持続可能性を確保するためです。

2015年のパリ協定採択により、世界平均気温上昇を1.5℃以内に抑える国際的な取り組みが始まりました。日本も2050年までの脱炭素社会実現を目指し、国を挙げて取り組んでいます。

参考:カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省

なぜ脱炭素社会が必要なのか

必要と言われている理由として、以下が挙げられます。

  • 地球温暖化を食い止めるため
  • 温室効果ガスの大半が二酸化炭素のため
  • 脱炭素社会とカーボンニュートラルの違い

脱炭素社会の実現は、地球温暖化を食い止めるための喫緊の課題です。ここでは、なぜ脱炭素社会が必要なのかについて、説明します。

地球温暖化を食い止めるため

脱炭素社会の実現は、大気中の二酸化炭素量を減少させ、地球温暖化の抑制に貢献することができます。二酸化炭素は熱を吸収し再放出する温室効果ガスで、その増加は地球の平均気温上昇の原因です。

気候変動による食糧生産への影響も懸念され、人類の生存環境を脅かす可能性があります。これらの理由から、大気中の二酸化炭素量を削減し、脱炭素社会を目指す取り組みが進められています。

温室効果ガスの大半が二酸化炭素のため

地球温暖化の主因は温室効果ガスであり、その大半を二酸化炭素が占めています。日本の温室効果ガス排出量の約90%が二酸化炭素であることから、その削減が温暖化対策の焦点となっています。

法律で定められた7種類の温室効果ガスのうち、二酸化炭素の削減が最も重要視されています。国は企業や個人に対して補助金制度などを通じて、二酸化炭素排出量の削減を促進し、地球温暖化対策を推進しています。

参考:地球温暖化対策の推進に関する法律 | e-Gov 法令検索

脱炭素社会とカーボンニュートラルの違い

脱炭素社会と合わせてよく使われるカーボンニュートラルとは、排出された温室効果ガスを森林などが吸収する量と相殺して、実質的にゼロにすることを指します。一方脱炭素社会は、二酸化炭素排出量を実質的にゼロにする「社会(生活や企業活動)」のことです。

カーボンニュートラルの例として、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを活用して二酸化炭素の排出量を減らし、植林活動などで、吸収量を増やす取り組みなどが挙げられます。他にも、大気中の二酸化炭素を回収し貯留する方法なども行われています。

脱炭素社会の実現には、カーボンニュートラルの発想を取り入れた工夫が必要です。

脱炭素社会実現への日本の課題

脱炭素社会実現に向けて日本が解決すべき点は以下が挙げられます。

  • 電力発電の化石燃料依存
  • 鉄鋼業による大量排出
  • 運輸関連の脱炭素化の遅れ

日本では化石燃料への依存度が高いため、二酸化炭素の排出量が大多数を占めます。

ここでは、脱炭素社会実現への日本の課題について、わかりやすく解説します。

電力発電の化石燃料依存

日本の二酸化炭素排出量の約4割を電力発電が占めています。従来から火力発電が主力でしたが、2011年の東日本大震災後、原子力発電所の停止により、その依存度が更に高まりました。

2022年度の発電電力量では、火力発電が約70%以上を占め、再生可能エネルギーは約22%に達しています。しかし、現状では依然として火力発電に大きく依存しており、化石燃料の燃焼による多量の二酸化炭素排出が続いています。

鉄鋼業による大量排出

鉄鋼業は日本の主要産業であり、社会インフラを支える重要な役割を担っていますが、同時に大量の二酸化炭素を排出する課題です。

日本全体のCO2排出量の約12.5%を占め、その規模は運輸部門の約70%、家庭部門の約80%に相当です。製鉄プロセスでは、鉄鉱石の還元に必要な高温処理により、鉄1トンあたり約2トンのCO2が発生します。

この状況を改善するため、業界では新技術開発や革新的な製造プロセスの導入が進められています。

運輸関連の脱炭素化の遅れ

運輸部門の脱炭素化は大きな課題となっています。自動車、航空機、船舶など、多くの輸送手段が依然として化石燃料に依存しており、個人車両から物流用車両まで、その排出量は無視できません。

電気自動車の普及が進んでいますが、まだ十分とは言えず、製造過程でのCO2排出量がガソリン車を上回る点も問題です。運輸関連の脱炭素化には、さらなる技術革新と普及促進が不可欠です。

脱炭素社会実現のための日本の取り組み

脱炭素社会の実現には段階的なアプローチが不可欠です。日本では、地域特性を活かした脱炭素化、再生可能エネルギーの拡大、そして電気自動車の普及促進など、多角的な取り組みを進めています。

カーボンプライシングの検討

カーボンプライシングとは、炭素に値段をつける政策手法の1つです。二酸化炭素を排出した企業や法人に、課税などを行う制度を指します。

国内で行うカーボンプライシングの種類は、主に以下の3つが挙げられます。

カーボンプライシングの種類 内容
炭素税 二酸化炭素の排出量に比例した課税を行う
国内排出量取引 企業に二酸化炭素の排出量の上限を設定し、上限を超えた場合は、余裕のある企業の排出量を購入する仕組み
クレジット取引 省エネ設備や再生可能エネルギーの使用で削減した二酸化炭素量をクレジットとして認証してもらい売却などで活用する制度

二酸化炭素排出量に価格をつけ取引することで、新たな経済市場ができあがることも期待できます。

クレジット取引など一部の制度はすでに実施しています。しかし、取引の公平性を保つために、さらなる議論がすすめられています。

ゼロカーボンシティの推進

ゼロカーボンシティは、2050年までにCO2排出量の実質ゼロを目指す自治体です。各地域の特性を活かし、再生可能エネルギーの導入や地域資源の有効活用など、多様なアプローチで脱炭素化に取り組んでいます。

20251月現在、1100を超える自治体がこの構想に参画しており、その数は着実に増加傾向にあります。この動きは、持続可能な社会の実現に向けた地域主導の取り組みとして広がりを見せています。

イノベーションの促進

脱炭素社会の実現に向けて、革新的技術開発が急速に進んでいます。鉄鋼業では、水素還元技術を用いた試験炉でCO2排出量を約43%削減する成果を上げました。

また、メタネーション技術やスマートシティの構築など、多様な分野でカーボンニュートラル技術が進化しています。政府は「グリーン成長戦略」を通じて、経済成長と環境適合の両立を目指しており、産学官連携によるイノベーション促進が、CO2排出量実質ゼロの達成に不可欠です。

まとめ

脱炭素社会とは、人類の活動によるCO2排出を実質ゼロにする社会を指します。CO2は主要な温室効果ガスであり、その増加は地球の生存環境を脅かします。2015年のパリ協定以降、CO2実質ゼロ目標が国際的に広まり、カーボンニュートラルの概念も普及しました。

日本では多くの分野で化石燃料依存が高く、脱炭素社会実現には国、地域、企業、個人の総合的な取り組みが不可欠です。再生可能エネルギーの普及や技術革新の促進が重要な課題となっています。

MDIでは、省エネ/排熱回収コンサルティングも行っております。ぜひお気軽にご相談ください。
 

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