2024.04.19

冷凍とは?知っておきたい冷凍装置の基本を解説

冷凍とは?知っておきたい冷凍装置の基本を解説

食品の保存から空調システムに至るまで、さまざまな場面で冷凍技術が活用されています。この技術は、今では私たちの日常生活に欠かせないものになりました。

この記事では、「冷凍とは一体何なのか」「どのような原理や装置が使われているのか」など、知っておきたい冷凍装置の基本をわかりやすく解説します。

冷凍とは

冷凍とは、機械や装置を使って、物や食品を自然界の温度よりも低くする技術のことです。これにより、食品を長持ちさせたり、飲み物を冷たいまま維持したりことができます。

なお、水の蒸発などを利用し、自然界の現象で物を冷やすことは冷凍ではなく冷却と呼びます。例えば、冷凍・冷蔵庫でスイカを冷やせばそれは冷凍・冷蔵ですが、井戸水にスイカを浸して冷やせば、それは冷却といいます。

食べ物の多くは、冷凍や冷蔵という技術で新鮮さを保ちます。例えば、野菜を考えてみましょう。農場で収穫された野菜は、冷蔵機能を備えたトラックで市場や店まで運ばれます。その後、スーパーマーケットでは、野菜が傷まないよう冷蔵ショーケースが利用されます。また、私たちが購入してからも、野菜は家庭の冷蔵庫で保存されます。このように野菜はもちろん、魚や果物、乳製品など、さまざまな食品が冷凍や冷蔵の技術で新鮮さを保っています。

また、普段過ごす部屋やオフィス、公共施設などでは、空調設備が利用されて快適な空間が維持されています。この空調は、エアコンディショナーという装置によって実現しており、温度・湿度・空気の流れなどを調整し、居心地の良い環境を作ります。空調を効果的におこなうには、冷房用の冷凍機が使用されます。このように家庭やオフィス、さまざまな施設で快適な環境を実現できているのは、冷凍技術のおかげです。

冷凍・冷却方法の種類

ここでは冷凍と冷却の方法を5種類に分けて解説しましょう。

基本は「温度差のある物を利用し、高い温度の領域から、低い温度の領域に熱を移動させる」という手法であり、利用する物によって大別することができます。

低温の物体を利用する

1つ目の方法は低温の物体を利用するというものです。例えば、冷水にスイカを入れると、スイカから冷水へ熱が移動し、スイカが冷え始めます。これは、スイカと水の温度差を利用し、スイカを冷やしています。ただし、時間が経過しスイカと冷水の温度が同じになれば(熱平衡状態になる)、熱の移動が停止し、スイカをこれ以上冷やすことはできません。

寒剤を利用する

氷と食塩を混ぜたものは寒剤と呼ばれ、冷却作用があります。氷と食塩の比率を3:1にすると、その混合物の温度は約-20℃まで下がります。この低温の寒剤をいれた容器にアイスクリームのもとになる液体を投入すれば、アイスクリームができます。ただし、食塩が溶け切ってしまうと、寒剤の冷却効果は弱まり、一定の低温を保つことができなくなります。そのため、この方法では、長時間にわたり物を冷やし続けることは困難です。

昇華を利用する

物質が熱をもらい固体から気体の状態に変化する現象を昇華といいます。例えば、ドライアイス(-79℃)を入れた箱の中にケーキを入れておくとドライアイスが昇華するため、箱内の空気が低温に保たれます。このようにして、ケーキを冷やすことができます。しかし、ドライアイスがすべて気体に変われば、冷却効果はなくなります。

融解を利用する

物質が固体の状態から液体の状態に変化することを融解と呼びます。これを利用して、物を冷やすことができます。身近な例としては、コップの水を冷やすときには、氷を入れることが多いと思いますが、これは融解を利用しています。氷が溶ける過程で周囲から熱を吸収し、水を冷やしているからです。ただし、氷もいずれ融けてしまうため、その後は冷やす能力が失われます。

蒸発を利用する

5つ目の方法は蒸発を利用します。蒸発とは、物質が熱を受け取って液体から気体に変わる現象のことです。蒸発するとき、物質は周囲から熱を吸収するので、これを利用して物を冷やすことができます。例えば、人が汗をかき、その汗が蒸発するときには体温が下がりますが、これは蒸発によって体が冷やされているということです。

ただし、蒸発に水を利用する場合、水の性質から0℃以下には冷やすことができません。そこで、特別な液体(冷媒)を使って蒸発させることで、もっと低い温度に冷やすことができます。また、何らかの仕組みで、冷媒を連続的に蒸発させることができれば、物を冷やし続けることもできます。このように蒸発を利用すれば、特定の低温で、継続的に物を冷やし続けることができるため現在、さまざまな冷凍装置にこの仕組みを応用しています。

参考ページ:蒸発とは?物質の状態変化の基本をふまえて解説

冷凍装置のタイプ

前述したとおり、蒸発を利用した冷凍装置は、家庭や産業で広く利用されています。そこでここでは、冷凍装置のタイプをとりあげ解説します。

吸収式冷凍装置

吸収式冷凍装置は、水を冷媒として吸収式冷凍サイクルを利用して冷水や温水を作る装置です。吸収式冷凍装置は、大きな電力を使わずに排熱エネルギーを利用することもできるため、省エネルギーの面で優れています。

参考ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介

蒸気圧縮式冷凍装置

蒸気圧式冷凍装置とは、内部に圧縮機を持っていて、蒸発と凝縮の繰り返しによって物を冷やす装置です。効率が良いため、一般的な冷凍・冷房機器に広く使用されています。

直接冷却方式

蒸気圧式冷凍装置には、直接冷却方式と間接冷却方式があります。直接冷却方式は、冷媒という特別な液体を蒸発させて物質を直接冷やす方式のことです。冷蔵倉庫やエアコン、ショーケースなど、さまざまな場面で使われます。

間接冷却方式

間接冷却方式は、冷水や冷ブラインといった中間の液体を使って物質を冷やす方法です。一般的には、食品冷却などで使用されます。

冷凍装置の仕組み

冷凍装置の基本的な構成は圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器の4つです。そこで、この4つの機器について詳しく解説します。

圧縮機

圧縮機は、冷凍装置の心臓部ともいえる重要な機能を持ちます。圧縮機の役割は、蒸発器で冷たくなって圧力が下がった冷媒ガスを吸い込み、圧力を上げて温かくすることです。その後、その高圧・高温のガスを凝縮器に送ります。

凝縮器

凝縮器は、圧縮機から送られた高圧・高温の冷媒ガスを冷やし、液体に変える役割があります。このとき、冷媒は熱を放出し、その熱は周りの空気や水に移動します。その後、液体になった冷媒が膨張弁に移動します。凝縮器は、空気で冷やすタイプ、水で冷やすタイプ、蒸発させて冷やすタイプなどがあり、使う場所や冷凍装置の大きさになどによって適したタイプが利用されます。

膨張弁

膨張弁は凝縮器からきた高圧の冷媒(液体状)を蒸発器に送るときに、圧力を下げます。圧力が下がると、冷媒は蒸発器の中で冷たくなり熱を吸収します。膨張弁にはいくつかの種類があり、熱の変化に合わせて自動で冷媒の量を調整するタイプや、電子的に細かく調整するタイプなどが挙げられます。

蒸発器

蒸発器は、膨張弁を通って圧力と温度が下がった冷媒を蒸発させる役割のものです。冷媒が蒸発するときに周りの熱を吸収するため、そこに冷却効果が生まれます。

まとめ

冷凍技術は、日常生活のさまざまな場面で利用されています。そのため、冷凍の仕組みや冷却方法、冷凍装置の種類などを詳しく知ることで、その仕組みを理解しやすくなるでしょう。

今回の解説では、基本概念から始まり、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器など冷凍装置に使用される機器や、冷却方法などについてもお伝えしました。冷凍技術の科学的原理について理解が深まれば幸いです。

 

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