凝縮熱とは?基礎知識と活用場面をわかりやすく解説
凝縮熱は、「気体」が凝縮して「同じ温度の液体」になるときに放出される熱のことをいいます。
実はこの凝縮熱、私たちの生活におけるさまざまな場面と密接に関わっているんです。
今回は、凝縮熱の基本として、凝縮とはどんな現象かをわかりやすく解説したうえで、身近な場所や生活で凝縮熱がどのように活用されているかを紹介します。
目次
凝縮とは
凝縮とは、気体が圧縮または冷却されて液体になる現象のことです。
物質はどれも固体・液体・気体の3相のいずれかの状態を保っています。ここに熱や圧力が加わると、3相のうちいずれかに変化するのが、物質の状態変化です。凝縮とは逆に、液体が蒸発または沸騰して気体になる現象を「気化」といいます。
関連ページ:気化と蒸発の違いは?メカニズムや活用場面を解説
なお物質が状態変化を始める温度は、物質ごとに決まっています。凝縮が始まる温度のことを「凝縮点」と呼びます。
凝縮熱とは
凝縮熱とは、凝縮にともなって発生する反応熱です。
凝縮や気化が起きるとき、エネルギー、つまり熱の変化が生まれます。ですが必ずしも温度変化がともなうわけではありません。
一般的に熱として認識されやすい温度変化をともなう熱を「顕熱(けんねつ)」と、温度変化をともなわない熱を「潜熱(せんねつ)」と呼びます。潜熱は物質の温度を変えることなく、その形状を変えるために使われる熱であり、凝縮熱は潜熱の一種です。
気化熱との違い
凝縮熱と密接な関係にあるのが、気化、つまり液体が気体になる反応に伴って発生する「気化熱」です。凝縮熱と同じく反応熱・潜熱の一種であり、周囲の熱を奪う働きをします。
凝縮熱と気化熱は、同じ熱量で発生する現象です。しかし、凝縮熱は発熱反応、気化熱は吸熱反応と、実際の反応はそれぞれ異なります。そのため、熱化学方程式で表記する際は、+または–の違いが発生するのです。
気化熱は、人体の仕組みにも影響します。たとえば気温や体温が上がると汗をかき、汗が乾くと気化熱の吸熱反応が発生し周囲の熱を奪います。これにより、体温を下げることができるのです。汗をかいている状態で風に当たると涼しく感じるのは、気化熱により体が冷やされている証拠といえます。
ちなみに、湿度が高いと汗をかいても涼しく感じないのは、空中の水分量が多いために気化熱で発散される熱量が少ないためです。大気が抱えられる気体には限界があります。湿度が高いとこの限界にすぐ到達してしまうために、汗がいつまでも肌に残ってしまうのです。
そして凝縮熱を観察するなら、「結露」がイメージしやすいでしょう。たとえば、暑い日に水の入ったコップを置いておくと、表面が結露します。これは、中の水によりコップ周辺の空気が冷やされることで、空気内の水蒸気が凝縮点(凝縮が始まる温度)を迎え、液体に戻ったためです。
気化熱の吸熱反応は、テクノロジーにも広く活用されています。特によく活用されているのが、工場などにある冷却装置です。工場の空調や製品を冷やすために活用されています。
冷却装置の多くは、効率的に空気や物を冷やすために、凝縮の集熱反応を利用して周囲の熱を集めてから気化させているものが多いです。このことから、凝縮熱と気化熱は、工業的な意味でも密接な関係にある仕組みといえるでしょう。
関連ページ:気化熱の仕組みを知ろう!どんなところで使われている?
凝縮熱が活用される場面
ここでは、凝縮熱が活用される場面を見ていきましょう。
凝縮熱は熱を集めたり、ものを温めたりするときによく活用されている現象です。衣類だけでなく、暖房器具や冷蔵庫、工場などでは乾燥機や冷却システムの一部として使われています。
吸湿発熱素材の衣類
凝縮熱が使われているものとしては、吸湿発熱素材の衣類があげられます。着ているだけで温かさを感じられる吸湿発熱は凝縮熱を応用した技術です。
吸湿発熱素材に使われている繊維には、肌から出ている水蒸気を集め、細かい水滴上にします。これにより、凝縮熱による発熱反応が起こり、体を温めてくれるのです。
なお、衣類に使われている素材は凝縮熱を起こす物だけでなく、集めた熱をとどめておく繊維や、衣類が濡れないよう、集めた水分で服が濡れないよう適度に水分を放出する繊維も含まれています。
エアコン
凝縮熱と気化熱は、さまざまなテクノロジーで活用されています。その代表的なものが、エアコンです。エアコンは、以下のパーツで構成されています。
- 熱交換器が搭載された室内機
- 熱交換器・圧縮器と減圧機・ファンが搭載された室外機
- 冷媒ガスが満たされたパイプ
冷媒ガスが満たされたパイプは、室内機と室外機をつないでおり、エアコンを動かすと冷媒ガスが循環する仕組みです。動きは冷房と暖房でそれぞれ異なりますが、凝縮熱と気化熱を利用している点は変わりません。
冷房のスイッチを入れると、室外機は室内の空気ごと熱を冷媒ガスへ取り込みます。室内の熱を奪った冷媒ガスは、気体へ変化します。気化熱で室内の温度を奪った冷媒ガスは、そのまま室外機へ送られ、圧縮機でより高温の状態に変換されるのです。
高温になった冷媒ガスは、ファンの前を通過することで、熱が放出されます。熱の放出により凝縮された冷媒ガスは液体になり、さらに減圧機にてさらに冷やされた状態で室内機へ送られ、熱交換機から冷たい空気を室内へ送り込むのです。この凝縮と気化の循環を繰り返すことで、エアコンは涼しい環境をつくり出します。
暖房の場合は、冷房とは逆です。外部の熱を室外機から取り込み、冷媒ガスに熱を吸収させます。凝縮熱により温められた冷媒ガスは気体になり、さらに圧縮機にかけられ温かい空気をつくり出すのです。
温められた冷媒ガスは、室外機の熱交換機から熱を放出し、凝縮します。冷えた冷媒は液体になった状態で減圧機にかけられ、外気よりも冷たくなることで外の熱を吸収し、また温められるのです。
なお、圧力を調節すると物質変化が起こる現象は、ボイル=シャルルの法則によるものです。圧力と温度は比例する法則があり、エアコンはこれを利用して冷媒ガスを温めたり冷やしたりしています。
関連ページ:熱交換器が活躍!エアコンの冷暖房の仕組み
廃棄物の乾燥
廃棄物処理場では、凝縮熱を利用して廃棄物を乾燥させる仕組みも採用されています。従来のボイラーによる乾燥だけでなく凝縮熱も利用することで、より優れた作業効率を実現しているのです。
付着・粘着性の高い物質でも、凝縮熱を利用すれば低温で乾燥できるため、機器の中にゴミなどが詰まるトラブルも回避できます。また、低温乾燥した廃棄物は、燃料や土壌改善薬としても使えるなど、リサイクルにも有効です。
このように、凝縮熱と気化熱の仕組みは身近なところだけでなく、私たちの生活を支える施設でも広く活用されているのです。
まとめ
凝縮熱は、潜熱の一種で気体が凝縮して液体になるときに発生するエネルギーです。同じようなものに気化熱があります。気化熱は液体が気化するときに生まれるエネルギーで、凝縮熱と同じく潜熱であり、発生する熱量も同じです。
これらの現象は、さまざまな場面に使われています。凝縮熱や気化熱について知ることで、その仕組みを理解しやすくなるでしょう。
アルファラバルの熱交換器やヒートポンプによる排熱利用と省エネならMDI TOPへ戻る