2022.06.12

熱交換システムとは?仕組みやメリットを解説

熱交換システムとは?仕組みやメリットを解説

熱交換システムとは熱の性質を活用した仕組みのことです。熱は温度の高いところから低いところに移動する性質を持っています。この性質を活用して液体や気体を温める、もしくは冷やす装置として設置されるのが、熱交換システムです。

熱交換システムは工業製品からエアコンや冷蔵庫といった身近な電化製品のほか室内の換気である全熱交換器まで、広く活用されています。

この記事では熱交換システムの仕組みやメリット、また熱交換システムの効果を最大限発揮させるために知っておきたい点について解説します。

熱交換システムの仕組み

熱交換システムは、高温から低温に移動する熱の性質を利用して加熱や冷却をおこなう仕組みです。外の新鮮な空気を取り込む給気と室内の空気を排出する排気を混合することなく熱だけを交換するシステムです。

換気熱交換システムが給気と排気の間で熱を移動させる仕組みを、冬の温度を例にご説明します。

熱交換システムの換気装置では室内の空気を排出する前に熱を取り除き、外から取り込んだ新鮮な空気に移されます。室内に取り込まれるのは、熱を帯びた新鮮な空気です。したがって室温が大幅に下がる事態を避けられます。

エアコンの負荷を軽減できるので、電力の節約も可能です。

窓を開けて換気する方法では、冷えた外気が室内に入り込むことで室温が低下します。室内の快適性が大きく損なわれるほか、下がった分の温度を上げるためにエアコンを駆動させなければならないため、消費電力の増大も避けられません。

熱交換システムでは、外気の影響を受けずに換気ができます。季節や天候に左右されず、また窓を開けられない建築物でも導入できる仕組みです。

熱交換システムの種類

熱交換システムには次の2種類があります。

  • 全熱交換器
  • 顕熱交換器

顕熱とは温度計で測ることのできる熱(顕熱)を意味します。一方の全熱とは熱(顕熱)と湿度(潜熱)の両方のことです。全熱交換器と顕熱交換器では取り扱う熱の種類が異なることから、活用されるシーンにも差が生じます。

全熱交換器とは

全熱交換器とは給気と換気の両方を機械でおこなう換気装置です。換気しながら給気と換気それぞれの熱と湿度を交換するため、換気しながら室温を一定に保ちながら、省エネ効果も期待できます。

全熱交換器は熱が本来持っている性質を活用しているため、熱の交換に際して動力が不要です。窓を開けるといった換気方法では、外気の影響による室内の温度や湿度の変動が避けられません。しかし、全熱交換器はエアコンの負荷を低減させるため省エネに貢献します。

2003年の建築基準法の改正によって、建築物への24時間換気装置の設置が義務付けられました。なかでも居室の快適さと省エネを両立しながら換気できる全熱交換器は、2017年の建築物省エネ法の義務化に伴い、室内換気システムのスタンダードとなっています。(参考:全熱交換器がスタンダードです!-建築物省エネ法義務化-(一般社団法人日本冷凍空調工業会))

顕熱交換器

給気と換気の熱だけを交換するのが顕熱交換器です。顕熱交換器では空気中の湿度はそのまま排気もしくは給気します。不快感につながる室内の過剰な湿度を屋外に逃がしますが、温度は逃さないのが特徴です。

顕熱交換器は、冬季の冷え込みが厳しく夏は冷涼な寒冷地で多く用いられます。これは湿度と体感温度の関係が理由です。空気中の湿度が低いと体感温度が下がるため、寒さを感じます。逆に空気中の湿度が高いと、体感温度は高くなるという関係です。

寒冷地では外気の湿度が低く、室内の空気の方が多くの湿度を含んでいます。室内の空気から湿度を取り除くと室内の体感温度が下がるため、室温を上げなくてはなりません。そのため寒冷地では全熱交換機ではなく、顕熱交換器を採用するケースが多くあります。

熱交換システムのメリット

熱交換システムには、次のようなメリットがあります。

  • 室内の温度を一定に保つ
  • 省エネ
  • 結露防止

室内の温度を一定に保つ

室内の気温を一定に保ちながら換気するため、常に快適な室内の状態を維持することが可能です。

熱交換システムによる室内換気では室内の空気中から熱を取り除き、取り込んだ新鮮な外気に移して室内に流し込みます。外気温の影響を受けずに換気できるため、室温が大きく変動することがありません。

また全熱交換器であれば排気と給気の湿度も交換できるため、高温多湿な季節や乾燥が厳しい季節にも室内をより快適な状態に維持する効果が期待できます。

省エネ

熱交換システムは、熱が高温から低温に移動する仕組みを活用して室温の維持に貢献します。そのため熱交換システムを活用した換気機器には、高い省エネ性能が期待できます。

熱の移動は熱の特性を生かした仕組みであるため、熱交換には動力を伴いません。また熱を交換することで室温を一定に保つため、エアコンの負荷を軽減することが可能です。

最小限の動力で室内換気しながら室内環境の維持ができる熱交換システムを活用した換気機器は光熱費の節約に貢献します。

結露対策

熱交換システムは機密性の高い現代の建築物に欠かせない結露対策にも対応できます。熱交換システムを用いた換気システムでは、給気と排気の両方を機械でおこないます。このとき室内に大量に溜まった湿度も排出するため、結露の発生を防ぐことが可能です。

結露を放置すると建物を傷めるほか、カビや菌の増殖を促すため健康への悪影響も懸念されます。室内の湿度をコントロールする熱交換システムは、建物と建物を利用する人の健康を守る役割を果たす仕組みです。

ただ熱交換システムを用いた換気システムの場合、24時間稼働させることで十分に性能を発揮します。電気代を含むエネルギーのトータルコストを十分に考慮して設置する機器をお選びください。

熱交換システムの弱点

省エネ性能が高く建物を快適に保つことに長けた熱交換システムですが、次のような弱点があります。熱交換システムのメリットを最大化するために、熱交換システムの導入を検討する際の参考になさってください。

  • 導入や点検・修理にコストがかかる
  • 設置場所を選ぶ

導入や点検・清掃にコストがかかる

熱交換システムは、導入に際して配管や熱交換機器の設置といった大掛かりな工事が必要です。初期費用がかかるほか、性能を維持するための定期的な点検、清掃が欠かせません。

ただし熱交換器の機種によって、設置に際して広い場所を必要としないコンパクトサイズのものや設置工事や点検修理が軽微で済むタイプもあります。設置場所や必要な換気能力を加味してご検討ください。

設置場所を選ぶ

熱交換システムのうち全熱交換器は湿度を室内に戻す際に臭いも室内に戻すため、強い臭いの出る箇所には適しません。また多湿な場所での使用も不向きです。トイレや浴室といった箇所での使用には、排気機能のみ搭載した換気扇といった装置を設置してください。

また顕熱交換器は、外気に含まれる湿度をそのまま室内に取り込みます。気温が高くなる時期や、湿度が高い地域での使用には向きません。1年を通じて寒冷かつ湿度の低い土地での利用に適します。

まとめ

熱交換システムを活用した室内換気機器は、運用コストを抑えながら室内の快適性を維持できる仕組みです。室内の24時間換気が義務付けられている昨今、エアコンと併用することで熱交換システムは快適性と経済性の両立を実現します。

ただし導入に際しては設置場所に合わせた機器の選定や配管の配置のように、選定すべき点が多くあります。また熱交換システムの導入に際しては初期費用もかかるため、慎重な検討が欠かせません。

導入に際しては、熱交換器に関する豊富な知識と設置経験のある専門業者をご選定ください。

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