2024.01.10

伝熱とは?3つの基本形態と製品への活用例を解説

伝熱とは?3つの基本形態と製品への活用例を解説

鉄棒の端を火にあてると、次第にその箇所が高温になります。そして、時間が経過すると、火にあたっていないもう一方の端も次第に熱くなります。このように、ある固体間、あるいは同一の固体の中でも温度差が生じることがありますが、温度差のある領域では均一になろうとする力が働きます。

これは固体だけでなく、液体・気体でも同様で、温度の高い領域から低い領域へ熱エネルギーが移動する現象がみられます。これを伝熱といい、熱交換器の仕組みを理解するうえでも知っておきたいトピックです。

今回は、そんな伝熱を深掘りして「伝導・対流・放射」などについて詳しく解説します。

伝熱とは

伝熱とは、異なる領域で温度差があるとき、その熱エネルギーが移動する現象を指します。

例えば、ストーブは非常に高温ですが、その温度は次第に部屋全体に広がります。これはストーブの熱エネルギーが部屋全体に移動したといえます。このように、2つ以上の領域(固体・液体・気体)で温度差があるとき、温度は高い箇所から低い箇所へ移動します。そして、この温度差が大きければ熱の流れは速くなり、温度差が小さければ緩やかになる特徴があります。

このような伝熱には3種類あります。1つ目は「伝導」です。これは固体の中で分子や原子が振動し、その動きが隣の分子や原子に伝わって熱が動きます。2つ目は「対流」です。対流は気体や液体が温まるとそれらが動き出し、その流れで熱が運ばれます。3つ目は「放射」です。放射は電磁波の形で熱が放出され、他の物体に吸収されることで移動します。これらの3つの方法を組み合わせて、私たちの周りでは熱が移動しています。

関連記事:伝熱係数とは?熱伝導率との違いや計算方法についても解説

伝熱の基本形態

前述したとおり伝熱とは温度差によって生じる熱エネルギーの移動現象ですが、分類すると伝導・対流・放射という3種類があります。そこで、それらの違いや特徴について下記に詳しく解説します。

伝導

伝導とは、熱い部分の原子や分子が運動エネルギーを持ち、その運動エネルギーが隣の原子・分子に伝わっていくことで、熱が熱い方から冷たい方へ移動する現象です。これを伝導、または熱伝導といいます。例えば、火にかけた鉄棒の一端が熱くなると、その熱が徐々に棒全体に伝わっていきますが、これは伝導が起こっているといえます。さらに伝導についての重要な概念をお伝えします。

熱伝導率

熱伝導率とは、物質がどれだけ熱を伝えやすいかを示す数値です。熱伝導率が高い物質は、熱をすぐに伝えることができるため、熱伝導体とも呼ばれます。例えば、金属は熱伝導率が高いので、熱をすぐに伝えます。一方、木材やプラスチックは熱伝導率が低いので熱を伝えにくく、断熱材として使われることがあります。このように物質によって伝導率は異なります。

物質名 熱伝導率 [W/(mK)]
418
アルミニウム 204
0.602
空気 0.0257

 

熱貫流率

熱貫流率とは、建物などの構造物を通してどれだけ熱が伝わるかを示す指標です。単位はワット毎平方メートル・ケルビンを使います。この熱貫流率が低ければ熱が通りにくいということを表し、断熱性が高いことになります。この熱貫流率は建築業界などで主に使われる概念です。

対流

対流とは、気体や液体の中で熱が移動する現象のことです。温度が高い部分は軽くなって上にあがり、冷たい部分は重くなって下にさがります。このようにして空気や水が動くことで、熱が移動します。例えば、気球の中の空気を温めると、暖かい空気が上にあがり、冷たい空気が下にさがります。こうして気球の中の空気が循環し、熱が全体に広がります。対流についての重要な概念を下記に2つお伝えします。

自然対流

自然対流とは、文字どおり自然に起こる熱の動きのことです。例えば、部屋を暖房することを想像してください。暖房すれば、暖かい空気は軽くなって上にあがります。逆に、冷たい空気は相対的に重くなり、下にさがります。このようにして、空気が上下に動き、部屋の中の熱が均一に広がります。このとき、空気の動きは外から何か力を加えられた訳ではありません。空気が温められたり冷やされたりすることで、自然に対流が起こっています。

強制対流

自然対流とは正反対に、強制対流はファンやポンプなどの機械で液体や気体を強制的に動かし、熱を移動させる現象のことです。外から力を加えることで流体が決まった方向に流れ、その結果、熱が効率的に伝わります。通常、も強制対流は自然対流よりも熱を早く移動させることができます。例えば、エアコンや冷蔵庫、車のラジエーターでは、ファンを使って空気を動かしているので、強制対流がおこっているといえます。

放射

高温の物体から電磁波の形でエネルギーが放出される現象を放射と呼びます。例えば太陽からの光(放射)をうけた大地がエネルギーを吸収して温まるなどが例として挙げられます。放射に関して重要な概念を下記にお伝えします。

放射率

放射率というのは、物体がどれくらい熱を放出できるかを示す数値のことです。この数値は0から1まであり、1がもっとも熱をよく放出する状態を指しています。逆に放射率が低い物体、つまり数値が0に近いものは熱をあまり放出していないということを意味します。

関連記事:熱の種類は3つ!それぞれの違いを解説

伝熱を活用した製品

伝熱のことをより身近に感じてもらうには、日常や産業において伝熱がどのような製品で利用されているかを知ってもらうことが役立ちます。そこで、ここでは伝熱を利用した代表的な製品を取りあげ解説します。

鍋やフライパン

もっとも身近にある伝熱を利用した製品といえば、鍋やフライパンがあげられます。鍋やフライパンは、熱を効率的に伝えることができる金属でできているので、調理の際には重宝します。例えば、アルミニウムや銅、ステンレススチールなどの金属は、火からの熱を効率よく受け取り、その熱を鍋やフライパン全体に広げていきます。結果として、食材を均一に加熱することができ、焦げ付きやムラを防ぐことができます。

断熱材

断熱材は熱を通さないようにして、家の中を暖かく保つことができるものです。断熱材は、熱がすぐに外に逃げたり、外から入ってきたりするのを防ぎます。そのため、夏は涼しさを保ち、冬は暖かさを保つことができるので、人は家で快適に過ごすことができます。断熱材として使用できる素材としては、発泡スチロールやグラスウールなどがあります。

扇風機

扇風機は、対流を活かした製品です。扇風機は、羽根を回転させ空気を動かし、部屋の中で空気の流れを作ります。この空気の流れによって室内が循環し、熱が分散されます。

暖炉

暖炉は主に空気の流れ、つまり対流を利用して部屋を暖めます。燃焼によって空気を温めますが、温まった空気は軽くなり上にあがり、逆に冷たい空気は下にさがります。これを繰り返すことで部屋の空気が循環し、暖かさが広がります。また、このような対流だけでなく、暖炉の表面からの熱放射も部屋を暖めるのに役立っており、対流と放射の組み合わせで部屋全体を均一に暖めています。

太陽光発電パネル

太陽光発電パネルは、太陽の光、つまり放射エネルギーを使って電気を作る製品です。太陽からの光がパネルに当たり、その光エネルギーが太陽電池という特別な材料の中で電子を動かすことで、電気をつくります。

リモコン

リモコンは、放射を利用した道具です。リモコンの中に赤外線という光を出すLEDがあり、ボタンを押すと特定のパターンで光が出ます。この光は目には見えませんが、電子機器がこの光を受け取ると、チャンネルを変えるとか音量を調節するといった操作がおこなわれます。

まとめ

伝熱は温度差によって熱エネルギーが移動する現象のことです。基本形態として、伝導・対流・放射の3つがあり、これらはそれぞれ異なるメカニズムによって熱が伝わります。

そして、これら伝熱の特性を利用した製品が私たちの生活や産業の中にたくさん存在します。身近な製品を使用したときには、この伝熱のことを思い出してみてはいかがでしょうか。

 

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