気化熱の仕組みを知ろう!どんなところで使われている?
暑い日に水を撒くと涼しく感じるのは、気化熱によるものです。
気化熱は、昔から暮らしの中で活用されてきました。現在は、生活の中だけでなく、さまざまなテクノロジーに活用されています。
今回は、そんな気化熱の仕組みと、気化熱が利用されているものを解説しましょう。
目次
気化熱の仕組み
液体が気体になるとき(気化)、周囲の熱を吸収する性質を持っています。このとき液体の周囲から奪われる熱が、「気化熱」です。
熱エネルギーの移動は気化するときだけでなく、凝縮、つまり気体が液体になるときにも発生します。この熱を凝縮熱といい、凝縮熱は気化熱とは逆に、周囲に熱を放出する性質を持っている変化です。
エネルギーの移動に伴って発生する熱を、潜熱と呼びます。凝縮熱は潜熱の一種であり、気化熱と同じエネルギー量を持っているのです。
なお、液体が気化する温度は、物質ごとに異なります。たとえば、アルコールは水よりも低い温度で気化します。手に消毒液をかけるとしばらくスースーした感覚がするのは、アルコールが気化するときに手の温度を奪っていくためです。
身近な気化熱の例
気化と気化熱の仕組みは、人体にも活用されています。汗をかくと汗に含まれる水分が水蒸気化することで、気化熱を生み出し、周囲の熱が奪われることで体温が下がるのです。汗をかいている状態や、お風呂上りに風に当たるといつもより涼しく感じるのは、空気が肌に当たることで吸熱反応が起こることが関係しています。
また、気化熱を感じられる現象は、これだけではありません。洗濯物を干したところにいると、ひんやりとした感じを覚えることがあります。これは、洗濯物に含まれる水分が水蒸気になる際、周囲の温度を奪っているためです。このように、気化熱は身近な場所で発生しています。
気化熱を実感できる実験
気化熱を実際に体感できる実験を紹介します。実験自体はとても簡単なので、興味がある方はぜひ挑戦してみてください。
実験に必要な道具は、以下のふたつです。
- 2本のタオル
- お湯
タオルをお湯に浸して絞ったら、一本はそのまま放置し、もう一本は端を持ってぐるぐる振り回しましょう。ある程度振り回したら、タオルを触って温度を確認します。実験が成功していれば、振り回したタオルの方が、冷たくなっているはずです。
タオルを振り回すと、その分空気に触れるため気化熱が発生しやすくなります。結果、放置したタオルよりも振り回したタオルの方が、冷たくなっているというわけです。
気化熱が利用されているもの
気化熱は私たちの身近な場所でよく発生します。そのため、昔からさまざまなところで活用されてきました。現在では、生活の知恵から工場などで活用されているテクノロジーまで、幅広い所で利用されています。次は、気化熱を利用した道具やテクノロジーについて解説します。
打ち水
打ち水は、地面に水をまくことで暑さを和らげる方法です。昔から熱い時期に熱を下げる方法として活用されていました。現在でも、夕方になると打ち水をしている方を見かけることがあります。
地面に水がまかれると、地表の熱を奪いながら気化します。これにより、地面の温度が下がることで、涼しく感じられるようになるのです。ちなみに、地面だけでなくベランダでも効果を発揮します。
簡単に涼が得られるためとても便利ですが、打ち水をするときは時間帯に注意しなくてはなりません。日の高いうちに打ち水をすると、すぐに水が温められてしまいます。結果、家の周りに高温の水蒸気が発生してしまうため、逆効果です。
打ち水をするときは、朝日が昇り始めた時間帯や、夕方または日が沈んだ夜などに実施しましょう。また、周囲の人に水がかからないようご注意ください。
水飲み鳥
気化熱を利用した仕組みは、おもちゃにも見られます。水飲み鳥は、気化熱を利用したおもちゃです。水飲み鳥は、以下の動きを繰り返すことで動いています。
- 水飲み鳥の頭に水が付くと、水が蒸発して気化熱が発生する
- 頭部の温度が奪われると内部のジクロロメタンが凝縮し、頭部の気圧が下がる
- 頭部と胴体に生まれた気圧差により、胴体部分の液体が上昇する
- 液体の移動で重心が下がることで、頭部が下がる
- 再度頭部に水が付くと内部が傾いた状態になり、胴体へ液体が流れる
- 液体が急に元の重心に戻るので、水飲み鳥は振り子のような動きを繰り返す
2番目にある凝縮とは、気化とは反対の動きで気体が液体になる状態変化です。凝縮が起きると、周囲に熱を放出する凝縮熱が発生します。この凝縮熱は、気化熱とともにさまざまな場所で活用されている現象です。
水飲み鳥は、一見すると単純な動きを繰り返すだけのおもちゃに見えるかもしれません。しかし、実際は気化熱と凝縮熱、重心の移動など、さまざまな反応が発生しています。
昔ながらのおもちゃには、複雑な反応を応用したものが多いです。仕組みを理解できれば、今以上に楽しめるようになるでしょう。
冷蔵庫
気化熱は家電にも活用されている現象です。その中のひとつに、冷蔵庫があります。冷蔵庫の内部には温度を一定に保つための冷媒ガスと呼ばれるガスが充填されており、これが内部で出入りすることで中を冷やすのです。詳しい流れをまとめると、以下のようになります。
- 気化した状態の冷媒ガスが庫内へ放出される
- 庫内へ放出されたガスは、周囲の熱を奪って再度パイプ内に戻される
- パイプに戻る際圧縮機にかけられ凝縮し、液体になる
- 液体のままパイプを通り、熱を排出する
- 再度圧縮機にかけられ気体になったら、庫内へ放出される
冷蔵庫の傍にいると、位置により温かく感じることがあるのは、この放出された熱に触れるためです。また、熱を放出する位置を把握し、熱放出を邪魔しないように工夫するだけでも、冷蔵庫の寿命を長持ちさせるのに役立ちます。
関連ページ:冷蔵庫が冷える仕組みとは?ヒートポンプの構造や冷却方式も解説
チラー(冷却装置)
気化熱の仕組みは、工場の空調や製品の加工などにも活用されています。その代表的な例が、冷蔵庫と同じく熱交換器を活用したチラー(冷却装置)です。
中でも冷媒を使ったチラーは、気化熱と凝縮熱の仕組みを応用しています。チラーは冷媒ガスが循環する部分と冷却する液体などが循環している管があり、以下の流れを繰り返すことでものを冷やします。
- 蒸発器の中で、冷媒ガスが冷やしたい液体から気化熱を利用して熱を奪う
- 熱を奪った冷媒ガスは圧縮機で加圧される
- 加圧された冷媒ガスは凝縮器にて空気または冷水と熱交換して液体に凝縮・熱を放出する
- 冷媒ガスはそのまま膨張弁に送られ、低圧かつ低温の霧状になる
- 再度蒸発器に送られ液体を冷やす
冷やす液体は別のパイプとタンクにつながっており、チラー内部を通ることで冷やされる仕組みです。チラーは製造に水が必要な食品の製造や、金属加工を行う製造工場など、さまざまな場所で活用されています。
関連ページ:チラーとは?チラー(冷却循環装置)の種類や用途を解説!
まとめ
気化熱は液体が気体になるときに生まれるエネルギーで、さまざまな場所に活用されています。
気化熱の仕組みや法則が理解できるようになれば、生活の中でも生かせるようになるでしょう。興味がある方は、ぜひ気化熱を使ったシステムや製品を調べてみてください。
アルファラバルの熱交換器やヒートポンプによる排熱利用と省エネならMDI TOPへ戻る