2024.01.18

液相・気相・固相の基本!それぞれの性質と活用例を解説

液相・気相・固相の基本!それぞれの性質と活用例を解説

物質における「相」は化学の基本のひとつであり、熱交換器の設計や運用を理解するうえでも押さえておきたい概念です。

相は、温度や圧力などの外部条件によって、液相、気相、固相といった異なる状態に変化します。これらの現象は日常生活でも観察できるほか、身近な産業技術でもこの性質を活用したものが多くあります。

そこでここでは、相の基本と、各相が持つ独特の性質、活用技術について解説しましょう。

物質の三態の基礎知識

相を理解するうえで、前提知識として把握しておきたいのが物質の三態です。

私たちの日常生活には、さまざまな物質が存在します。その中でも、石・氷など一定の体積と形を持つものを固体と呼びます。また、エタノールや水のような液体や、蒸気、酸素のような気体も存在します。日常生活を見渡すと多くの物質は、この固体・液体・気体のどれかに分類できることが多いのではないでしょうか。

このように物質の状態の中で、もっとも一般的な3つのため「物質の三態」という固有の名称で呼ばれています。

物質の状態 性質
液体 一定の体積をもつが、形は不定で容器の形にしたがって変わります。そして、容器に触れない面(自由表面)は水平になります。
気体 体積や形を一定に保つことができず、自由表面はありません。どこまでも広がっていいき、温度が変化すると体積も変化しやすいです。
固体 一定の体積と形をもち、外から力を加えたとき、元の形を保とうとして手ごたえを示します。

 

液体、気体、固体の違いは、分子の集まり方によって決まります。

固体は、分子がきちんと並んでいて、ほとんど動かない状態です。液体は、分子がもう少し自由に動けるので、流れたり形が変わったりしますが、分子同士の距離はまだ近くにあります。気体では、分子がとても自由に動き回り、互いに離れた位置にあるため、空間に広がっていきます。

さらに物質は、温度や圧力といった外部条件によって変化し、このような変化を「状態変化」と呼びます。

例えば、水は固体の氷から温度が上がると液体の水に変化し、さらに温度が上がると気体の水蒸気に変化(蒸発)します。逆に、水蒸気が冷却されると水に変化(凝縮)し、さらに冷却されると氷へ変化(凝固)します。

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相とは?

相とは、化学において、組成や物理状態が均一で同じ性質を持つ物質が占める状態のことです。特定の液体だけで占める物質は「液相」、特定の気体だけで占める物質なら「気相」、特定の固体だけで占める物質を「固相」といいます。

ここで「液体と液相は同じ意味ではないか?」と思う方もいるかもしれませんが、厳密には異なります。

液体は、物質の状態の1つを表しており、固体と気体の中間に位置します。一方、液相は、液体の状態にある物質の均一な部分を指します。例えば、油と水の混合物全体は液体ですが、この中の水の部分だけを取り上げると、それは液相と呼ばれます。つまり、液相は液体の一部分や特定の成分を指すのに対し、液体は物質の状態そのものを表すということです。

物質は温度や圧力によって、液相・気相・固相という異なる状態になります。それぞれの相の基本的な性質について解説しましょう。

液相の性質

液相を構成する分子は、分子間距離が比較的小さいため分子間力が働き、分子は互いに引き寄せ合います。分子間力とは、分子同士の間に働く引力のことです。この分子間力によって、液体の表面積を小さくしようとするのが表面張力です。

また、液体の表面では、分子が分子間力を振り切り空中へ飛び出す現象が起こります。液体から空中へ分子が飛び出したときの圧力を蒸気圧といい、温度が高くなるとこの蒸気圧が上昇します。このように温度が高くなると液体分子の運動エネルギーが大きくなり、分子運動が活発になるため、分子間力を断ち切って蒸発するという仕組みです。ただし、一度飛び出した分子の中には、再び液体に戻るものもあります。つまり、液体の表面は分子が飛び出したり、逆に戻ったりして常に変化している状態です。

気相の性質

気相は分子間距離が大きく、分子は高速で自由に動き回ります。そのため、分子間力の影響は比較的小さいですが、完全に影響がないという訳ではありません。

例えば、気体が液体に凝縮する際や、気体同士が衝突する際には分子間力が影響します。

固相の性質

固相は分子間力が強く、分子や原子が密に配置されて一定の位置に留まることが特徴です。このため、固体は一般的に高密度と剛性を持ち、形状や体積が安定しています。

多くは「硬い」というイメージを持たれる傾向にありますが、固体の中でも金属のような材料は展延性を持っています。展延性とは、物質に力を加えたときに伸びたり、変形したりする能力のことで、金属の原子が規則正しい配列を保ちながら伸びたり変形したりします。

液相を活用した技術

液相は医薬品の製造からエネルギー生産、電子機器など、さまざまな分野で活用されています。そこでここでは、液相を活用した代表的な技術について解説します。

液晶ディスプレイ

テレビやスマートフォンの画面に使われているのが液晶です。液晶相は、液体と固体の中間のような状態です。普通の液体はどんな形の容器にも入れることができ、自由に流れます。一方、固体は形がしっかりしていて、自由に流れません。しかし、この液晶は特別な物質の状態で、流れることができるけど、分子が少しだけ並んでいるので一定の方向を持っています。そして、液晶ディスプレイは電気信号を液晶に送ることで、この方向を変えることで画像を表示しています。

インクジェットプリンター

インクジェットプリンターは、液相を活用した印刷技術です。液体インクを滴として紙に吹き付けることで文字や画像を描き出します。インクの液相特性が印刷の品質に影響します。

固相を活用した技術

ここでは、固相を活用した技術をとりあげ解説します。

固体電池

固体電池は、固相の電解質を利用する電池です。従来の電池は、液体の電解質が使われることが多かったのですが、固体電池はそれを固体に置き換えています。このように固体を利用することで、液漏れのリスクが減少したり、電池の安全性が向上したり、電池の寿命が延びるなどのメリットがあります。固体電池は、電気自動車やポータブル電子機器などに活用されています。

セラミックス

セラミックスは、高温や腐食に強い性質を持つ固相の材料です。特性としては、とても固くて、高温やさびにも強いというものがあります。この特性を踏まえて、飛行機のエンジンの部品や、自動車のブレーキの部分、コンピューターの部品などに使われています。

気相を活用した技術

ここでは、気相を活用した技術を取り上げ解説します。

気相クロマトグラフィー

気相クロマトグラフィーは、ガス状の物質(気相)を利用する分析技術のことで、医薬品や環境研究などの分野で使用されています。たとえば、薬がどんな成分でできているかや、空気がきれいかどうかを調べるなどのシーンで利用します。気相クロマトグラフィーは、ガスを流しながら、異なる物質がガス中をどれくらい早く動くかを見て、それぞれの物質を分けたり、どんな物質があるかを調べたりすることができます。

気相エピタキシー

気相エピタキシーは、ガスから薄い層を作っていく技術です。気相エピタキシーの技術を活用して、半導体など電子機器の性能向上や省エネルギーに役立てています。

まとめ

物質の基本的な状態である液相、気相、固相について解説しました。液相は流動性と一定の体積を持つ特性があり、気相は分子間距離が大きく、自由に動くことが特徴です。固相は分子間力が強く、一定の形状と体積を持ち展延性や磁性などの性質が見られます。

相は化学の基本の1つでもあるため、これらの違いを把握することで、さまざまな技術を理解しやすくなるはずです。

 

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