オゾン層破壊の現状は?工場が与えてしまう影響や対策を解説

私たちの地球には、太陽からの有害な紫外線を吸収し、生命を守るオゾン層という大切なバリアが存在します。しかし、この過去数十年にわたり高層大気の劣化がおきて、大規模な「オゾンホール」が観測されるようになり、社会全体の課題といえます。
オゾン層破壊の原因として、一般家庭や商業施設、工場で使用されるフロン類の成分といわれています。そこで、今回は工場が与える影響とその対策などを中心に解説します。
目次
オゾン層とは?
オゾン層は、地球の成層圏に存在するガスで、太陽からの有害な紫外線(UV)を吸収し、地球上の生命を保護する役割を担っています。これが薄くなると、より多くの紫外線が地表に到達し、皮膚がん、白内障、その他の健康問題を引き起こす可能性があります。
オゾンホールについて
高層大気の劣化が進むと、オゾンホールができることがあります。これは、成層圏のオゾンが極端に薄くなった領域のことです。厳密にいえば濃度が基準値である220ドブソンユニット(DU)を下回る領域のことで、実際に穴が開いているわけではありません。
特に顕著に見られる場所として、南極上空が有名です。南極では、冬の間に極渦(きょくうず)と呼ばれる強い気流が発生し、成層圏の温度が極端に低下します。
この低温環境が、破壊を促進していると考えられます。オゾンホールは毎年、南極の春(9月から10月)に最大となり、その後徐々に縮小します。一方、北極でも極渦が原因で同じようになることもありますが、南極ほど頻度は高くありません。
オゾン層破壊の現状
南極オゾンホールの状況は年々変動しています。
2023年は9月21日に最大面積2,590万km²を記録し、最近10年間で3番目の大きさとなりました。一方、2024年は9月28日に最大面積2,240万km²に達し、最近10年間の平均値程度でした。
オゾン層破壊物質の大気中濃度は緩やかに減少しており、2000年頃からオゾンホールの年最大面積も減少傾向にあります。しかし、依然として規模の大きな状態が続いており、気象要因による年々の変動も大きいため、継続的な監視が必要です。
参考:気象庁|報道発表資料
工場が与えてしまうオゾン層への影響
工場はかつてODSの主要な排出源であり、オゾン層破壊の大きな原因でしたが、モントリオール議定書による規制の結果、ODSの排出は大幅に減少しています。
しかし、依然として温室効果ガスの排出など、間接的に悪影響を与える可能性があり、継続的な監視と対策が必要です。
ODSの排出
工場は、かつてクロロフルオロカーボンなどの有害物質(ODS)を大量に排出していました。クロロフルオロカーボンは、無臭・無毒という特性を持っており、冷蔵庫やエアコン、エアゾールスプレーなどに使用されてきましたが、これらの製品が廃棄される際などに、漏れて大気中に放出されます。
一方で、クロロフルオロカーボンは、塩素やフッ素などからなる人工的な化学物質で構造的に安定しており、空気中でなかなか分解されません。結果として、成層圏まで到達し環境悪化にいたります。
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間接的な影響
工場は有害物質を排出する以外にも、間接的に影響を与えています。例えば、化石燃料を燃焼させることで排出される温室効果ガスは、成層圏の温度を変化させ、極地での高層大気の劣化を招いている可能性があります。
本来、温室効果ガスは、太陽からの熱を閉じ込めて地表を温める働きをしており、地球上の生命を維持するうえで欠かせません。地球の気温が保たれているのは、この温室効果ガスのおかげなのです。しかし、濃度が高すぎると異常気象や温暖化の原因になります。
オゾン層破壊の要因は多岐にわたる
大規模な火山噴火は、水蒸気やエアロゾルを成層圏に放出し、短期的にオゾン層に影響を与えます。
2022年の火山噴火は、2023年の南極オゾンホールの拡大に関与したと考えられています。
森林火災も成層圏の温度変化を通じてオゾン層に影響を及ぼす可能性があります。さらに、気候変動による温室効果ガスの増加は、成層圏の冷却を引き起こし、極成層圏雲の形成を促進することでオゾン層破壊を悪化させる可能性があります。
これらの自然現象に加え、人為的な化学物質の放出が長期的なオゾン層破壊の主要因であることが指摘されています。
オゾン層破壊が人に与える影響
高層大気の劣化が起こることで紫外線が増加し、人に対して健康被害を与えることがあります。紫外線はDNAを損傷させ、皮膚がんの主な原因となるほか、目の水晶体を傷つけて白内障を引き起こすこともあります。
また、免疫系が抑制されることで、感染症に対する抵抗力が低下する可能性もあります。
オゾン層保護のために工場ができること
工場から排出される化学物質により、オゾン層破壊が加速することが知られています。しかし、工場が適切な対策をとれば、環境を保護し、より良い環境づくりに貢献することが可能です。ここでは工場が取り組むべき具体策についてお伝えします。
ODSの停止
工場ができることの1つは有害な化学物質(ODS)の廃止が挙げられます。例えば、クロロフルオロカーボンやハロン、四塩化炭素、メチルクロロホルムなどの物質は、冷蔵庫やエアコン、消火器など多岐にわたる製品に使用されており、これらの物質がオゾン層破壊に影響します。
そのため、これらの物質の使用を停止することが肝心です。今後は、代替物質への切り替えをすすめ、環境負荷の低い物質を選択するようにしてください。
- クロロフルオロカーボン・・・アンモニア、炭化水素などに代替
- ハロン・・・ノボック、二酸化炭素などに代替
省エネルギーへ取り組み
工場におけるエネルギー消費を効率化し、化石燃料への依存度を減らすことで、環境保護につながります。具体的には、エネルギー効率の高い機器の導入、工場の断熱性の向上、操業プロセスの最適化などが挙げられます。
また、再生可能エネルギーへの転換をすすめることも重要です。太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーを導入することで、省エネルギーを実現し、温室効果ガスの排出量を減らすことができます。
従業員教育と意識向上
従業員教育と意識向上も肝心です。従業員がオゾン層破壊や地球温暖化といった環境問題への理解を深め、日々の業務や生活の中で環境に配慮した行動をとるように心がけましょう。
例えば、温室効果ガス排出のメカニズムなどについて、定期的な研修を通じて学ぶ機会を提供します。そして、個々の従業員が省エネルギーや廃棄物削減などの目標を設定し、具体的な行動につなげるように心がけが大切です。
サプライチェーン全体の管理
原材料の調達から製造・流通・販売にいたるまで、自社工場で生産する製品にかかわる全てのサプライチェーンで環境保護に取り組めば、工場単体で取り組むよりも、効果を高められます。
例えば、サプライヤーに対して環境基準や行動規範を設け、遵守することを求めるなどのことが考えられます。再生可能エネルギーに切り替え、廃棄物のリサイクルなど、できることは数多くあります。
その他、環境負荷の低い原材料や部品を優先的に調達し、輸送効率を高めるための物流ルートの最適化なども効果的です。このように、自社だけでなく、サプライチェーン全体で取り組むことで、環境負荷に対してより大きな影響を与えることができます。
まとめ
今回は、オゾン層破壊について工場が与えている影響、そしてできる対策などお伝えしました。一度に全ての対策をとることはできませんが、1つずつ自社でできることに取り組むことをおすすめします。
MDIでは、省エネ/排熱回収コンサルティングを実施しています。企業でできる取り組みについて相談したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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