プレート式熱交換器の仕組み~コンパクトでメンテナンスが簡単なプレート式熱交換器を解説!
プレート式熱交換器は、熱を移動させるために使用する機器です。
工場を始めとした産業部門では、加熱、冷却、蒸発、冷蔵・冷凍など様々な熱供給用途で熱交換器が用いられています。熱を移動させることで温度調整や熱回収、排熱利用などができる熱交換器は我々の生活や産業に欠かせないものです。
今回は、熱交換器の中でも導入率が高い「プレート式熱交換器」の仕組みや特徴などを説明します。
目次
プレート式熱交換器の基本
熱は基本的に高温の流体から低温の流体へ移動し、温度差が大きいほど熱の移動も激しくなる性質があります。熱交換器は、こうした熱の移動を効率良く行うための設備の中に使用されており、その中でもプレート式熱交換器は、薄い金属板を多数使用しているのが特徴です。
プレートに空いた穴を通って各プレート表面を流体が流れます。そのプレートの重なりを高温と低温が交互に流れ、そして、高温の流体の熱がプレートに伝わって低温の流体へ熱が移動する仕組みです。
また、熱交換器はプレート式以外にも多種ありますが、プレート式は高効率なために筐体を小さくすることが出来るのが特徴です。そのため、狭い場所でも設置できます。
関連ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介
プレート式熱交換器とは
プレート式熱交換器とは、複数の伝熱板を積層し、その間に高温流体と低温流体を流して熱交換を行う高効率な熱交換器のことです。構造的には小型、軽量、高効率熱交換の「3点セット」を備えた熱交換器とも言えます。
熱交換器はプレート式以外にも多種ありますが、プレート式は高効率なために筐体を小さくすることが可能です。そのため、狭い場所でも設置しやすくなっています。
プレート式熱交換器の仕組み
伝熱面積が広い波形に成型加工したステンレス、チタンなど耐食性の高い軽金属の薄板を伝熱板に用いています。この伝熱板は一定の隙間を空けて積層してガスケットで接合されています。
プレートに空いた穴を通る形で各プレート表面を流体が流れます。そのプレートの重なり部分へ高温流体と低温流体が交互に(伝熱板1枚置きに)流れ、対向流が形成されます。この際、高温の流体の熱がプレートに伝わることで、低温の流体へ熱が移動する仕組みです。
プレート式は伝熱面積が広いので高効率な熱交換が可能で、その分筐体を小型化できます。
プレート式熱交換器の用途
プレート式熱交換器は、主に産業用に使用されています。例えば、工場などで熱回収や排熱利用を行う場合です。プレート式熱交換器を使用することで、低温の熱も有効利用することも可能にできます。
身近な例を挙げると、オフィスビルやホテルなど大きな建物の設備にも、プレート式熱交換器が多く使われています。冷房や暖房は熱を移動させる設備としてイメージが湧きやすいでしょう。他には、食品から産業まで様々な工場でも使われています。
プレート式熱交換器のタイプ
プレート式熱交換器は次の3タイプに大別できます。
●標準型
主に水to水の熱交換に適したタイプです。蒸気to水の熱交換も可能で、容積が小さいので「第一種圧力容器」の適用も受けません。また伝熱板はガスケットで接合しているので、ガスケットの締付ボルトを外すだけで汚れの点検・洗浄ができるので、保守も容易です。
●ブレージング型
小流量流体の熱交換に適したタイプです。伝熱板の接合はガスケットではなく銅やニッケルのろう材なので、伝熱部を一体化した構造になっています。このため筐体は標準型よりさらにコンパクトで、業務用冷蔵・冷凍機のユニット熱交換器(付属部品)としての利用も可能です。
●耐熱・耐圧型
高熱・高耐圧の熱交換向けのタイプです。耐熱・耐圧性を担保するため、伝熱板の接合はレーザー溶接になっています。
プレート式熱交換器の特徴
プレート式熱交換器の特徴として、一般に次が挙げられます。
(1)乱流による熱交換の効率化
プレート式の伝熱板は波形に成型加工された波板で、しかも02―1.0㎜の薄さです。そして積層した複数の伝熱板の間を流れる流体は、波形の伝熱板の間の複雑な形状の流路を通過するので乱流します。その結果、以下のような理由で熱交換率が高まります。
- 伝熱板間を流れる流体温度が均一化する
- 熱交換の流体には熱交換の妨げになる「境膜」(流れに乗らない流体)が発生するが、乱流により境膜が破壊される
また伝熱板は使っているうちに流体に含有されている不純物が汚れとして付着し、熱交換効率が低下します。しかしプレート式の場合は、この乱流構造により一定の自動洗浄機能も備えています。
(2)伝熱面積が広い
プレート式の伝熱板は波形なので、他方式の平板の伝熱板に比べ約1.2倍の伝熱面積を持っています。そこで波形の伝熱板と平板の伝熱板に同一流量の流体を流すと、波形は伝熱面積が広いので伝熱板1枚当たりの流量が少なくなります。すなわち流体が流れている間の熱移動が大きくなります。
プレート式は伝熱板の伝熱面積の広さと熱移動の大きさにより、熱交換効率の高さと筐体の小型化を可能にしています。
(3)標準型は「現場最適」の熱供給が可能
標準型は伝熱板をガスケットで接合しているので、取り外しが容易です。したがって設置現場の熱使用量の変化に対応して伝熱板を増減することで熱交換能力の調整ができ、常に「現場最適」の熱供給が可能です。
(4)流体の温度調節が容易
他方式の熱交換器と比べ構造がシンプルなので流体の内部滞留量が少なく、運転に対して迅速に応答するので流体の温度調節が容易です。
(5) メンテナンスが容易
プレート式熱交換器は、使用されている部品が少なく可動部もないため、製品に起因する故障はほぼ起こりませんが、長期間使用することで汚れが蓄積します。そのため性能を保つためには、定期的なメンテナンスを行わなければなりません。
メンテナンスの主な内容は、異常箇所がないかどうかの確認と洗浄です。洗浄液を循環させて洗浄する場合と、ガスケットを取り外し、プレートを開放する場合があります。開放する場合は、洗浄液やジェット洗浄機などで洗浄して汚れを綺麗に落とし、ガスケットを交換します。
標準型の場合はガスケットの締付ボルトを外すだけで伝熱板の汚れを洗浄できます。ブレージング型と耐熱・耐圧型の場合は分解出来ませんが、熱交換器に安全な洗浄液を使用することで安心
容易に伝熱板の汚れを洗浄できます。
(6)小型・軽量で優れたコスパ
熱交換能力が同一の他方式の熱交換器と比べ、筐体は1/3―1/5のコンパクトさです。伝熱板はニッケル、チタンなどの軽金属なので筐体も軽量です。
このため工場の製造ラインの隙間など狭いスペースでも設置でき、設置場所の特別な基礎工事も不要です。この設置コストの低さと熱交換効率の高さが、多方式の熱交換器より優れたコストパフォーマンスを発揮します。
プレート式熱交換器の点検・保守
プレート式熱交換器は使用部品点数が少なく、しかもベアリング、歯車、ベルトなどの可動部品もないので、部品の摩耗に起因する故障はまず発生しません。しかし運転による汚れは必然的に発生します。汚れが溜まると伝熱効率が低下します。このためプレート式であっても定期的な点検・保守が必要です。
<プレート式の点検・保守の一般的な手順>
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このうち、3.の工程ではジェット水洗とブラシ洗浄で汚れを物理的に除去した後、化学洗浄で物理的に除去できなかった汚れを除去します。化学洗浄では一般に硝酸で汚れを除した後、伝熱板に付着した硝酸を苛性ソーダで中和洗浄し、最後にジェット水洗で苛性ソーダを洗い流します。
プレート式熱交換器の製品
ここではプレート式交換機の製品をピックアップして紹介します。
アルファ・ラバル製ガスケットタイププレート式熱交換器
熱交換器の世界トップメーカー、アルファ・ラバルの標準型プレート式熱交換器です。品質とコスパの高さでは「プレート式熱交換器ならアルファ・ラバル」と国際的な定評があり、我が国でも同社製プレート式熱交換器を導入する企業が増加しています。
■特徴
- 高い熱交換効率……2流体の流れが完全向流となり、また独自の波形プレートにより高い乱流が発生するため、わずか1℃の温度差でも高効率の熱交換が可能
- 熱交換量の柔軟な調節……交換熱量を上げる必要が生じた際はプレート枚数を追加、逆に下げる必要が生じた際はプレート枚数を減らすだけの簡単作業で、フレキシブルに熱量調節が可能
- 優れた経済性……プレートが薄く、筐体がコンパクトなので材料コストの節減が可能。これにより高い熱交換効率と共に優れたコストパフォーマンスを発揮
- 軽量・コンパクト……同一熱交換能力をもつ多管式熱交換器と比べ、同製品の筐体は1/3―1/5の軽量・コンパクトさ
- 迅速な応答性……プレート間の隙間が小さく、多管式熱交換器などに比べ流体の内部滞留量が非常に少ないので運転条件の変化に対して迅速に応答。このため流体の温度調節が容易
アルファ・ラバル製ガスケットタイププレート式熱交換器の詳細ページ
アルファ・ラバル製ブレージングプレート式熱交換器
標準型プレート式熱交換器の優れた性能はそのままながら、標準型よりなお小型・低価格化を実現したブレージング型プレート式熱交換器です。
■特徴
最新の冷媒ガス専用設計ACシリーズ、高レベル純水・アンモニア冷媒ガス対応のALFANOVA、汎用高効率+低圧力損失設計を実現した新型ブレージングプレートなどのラインナップで、ブレージング型プレート式熱交換器の多彩な熱供給用途に対応
アルファ・ラバル製ブレージングプレート式熱交換器の詳細ページ
レキュピレータ用プレート式熱交換器
最適な熱回収ができるガスtoガス専用のプレート式熱交換器です。
材質はアルミニウムで、大型空調設備の「エアハン」に組み込むユニット対応も可能です。
■特徴
- 最適な効率と圧力損失の両面から考慮したプレートピッチを選択可能
- 高温側と低温側の最大圧力差は10,000Pa(0.1bar)
- 腐食性の空気に適したエポキシコーティングが可能
- 「EUROVENT」と「TUV」の性能・品質認証済
- 長方形や流体ごとにプレート間隔を変えた特殊形状にも対応可能
- オプションでバイパス、ダンパーの選択が可能
空気/空気用プレート式顕熱交換器 HEATEXシリーズ
病院、老人向け施設、その他「空気環境」保全に配慮が必要な施設に適した換気回収熱の熱交換用プレート式熱交換器です。
■特徴
- 空気to空気専用に最適化したプレート形状を採用
- 圧力損失過多により必要以上に大型化・高価格化する課題を形状とピッチの改善で解決
- 固定式、カセット式など多様な応用が可能で、ヒートポンプ用熱源としても利用可能
空気/空気用プレート式顕熱交換器 HEATEXシリーズの詳細ページ
まとめ
プレート式熱交換器は、薄い金属板を使用して効率よく熱を移動させられる仕組みの熱交換器です。コンパクトな作りであるため狭いスペースにも設置でき、メンテナンスも比較的簡単に行なえるということで幅広い用途に使用されています。自社内でのメンテナンスが難しい場合には、販売業者によるアフターサービスを利用することもできます。
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