熱交換器の原理は?どのように熱を交換するのか
熱交換器とは、読んで字のごとく『熱を交換する器』です。産業・運輸・民生各部門で加熱、蒸発、冷却、廃熱再生など様々な熱利用において不可欠な機器となります。
ところが熱交換器は様々な機械・装置の部品として組み込まれている黒子のような機器のため、一般ユーザーの目に触れる機会はほとんどありません。
今回は熱交換器の原理を見ていきましょう。
目次
熱交換の原理
熱交換は、温度の高い物質と温度の低い物質の温度だけを交換することをいいます。熱の交換により、温度が高い物質の温度が下がり、温度が低い物質の温度が上がるという、非常にシンプルな仕組みです。
例えば、熱いお風呂の中に冷たい水を入れていくと熱の移動が起こります。お湯の熱は冷たい水へ移動し、最終的にはお風呂の温度が等しく適温になります。これは熱交換による現象です。
熱交換=熱の移動
熱交換は、熱の移動を意味しています。よって注意しなければならないのは、そこにある温度を超えて温度を上げたり、下げたりすることはできないということ。原則として熱交換だけでは新たに熱を作り出すことは出来ません。
例えば45℃のお湯を使って20℃の水を暖めたい場合、熱交換だけでは45℃以上になりません。なぜなら水がもらえる熱エネルギーは、お湯が持っている熱エネルギーのみだからです。
熱交換器の原理
このような熱の性質を利用して意図的に熱を移動する仕組みの機器が熱交換器です。流体の熱が高温の物質から低温の物質へと移動する性質を利用し、熱を効率的に移動させています。
例えば1本の金属パイプで熱湯を流すと、熱湯はパイプを流れる間にパイプの周りの空気が温められて気化熱が生じ、その作用でパイプ内の熱湯が冷やされます。熱交換器は、このような温度変化により生まれた熱エネルギーを効率的に利用するよう設計されています。
熱交換器では、このように管状やプレート上の金属や樹脂などの素材を介して物体や流体の温度を変えることで熱の交換(移動)を実現します。
熱媒と冷媒
熱交換器は上記の熱湯のように移動する流体、すなわち「伝熱媒体」によりその機能を発揮します。
熱交換を実現する上で利用される各種素材を温めたり、冷やしたりするものをそれぞれ「熱媒」、「冷媒」と呼びます。熱媒や冷媒には、熱いお湯や冷たい水などの流体が利用されます。ただし厳密に区別せず、単に熱媒・冷媒と呼ぶこともあります。
また、0度以下でも凍らない不凍液を冷媒として利用することで、食品を凍らせることも可能となります。
熱交換器の素材
熱交換器の基本構造は「伝熱板」や「伝熱管」となっており、熱伝導性が高い素材ほど熱効率が高くなります。
伝熱板(フィン)に使われる素材としては、熱伝導性に加えて加工性・耐食性・強度などが必要です。よって強度がつよく、熱伝導性の高い材質であるアルミニウムが多く用いられています。近年では加工のしやすさから、アルミニウムの純度が低いものが積極的に利用されるケースも見られるようになっています。
伝熱管の場合は、熱伝導性と耐食性が必要なことから、ステンレス、銅合金、アルミニウム合金などが用いられています。
熱交換器の種類
熱交換器の原理をふまえて熱交換器の種類をみていきましょう。熱交換器は伝熱方式により「隔壁型」、「直接接触型」などに分けることができます。
・隔壁式
高温・低温2種類の流体を金属板により遮蔽し、それぞれを相互に循環させて熱交換をするタイプです。加熱、蒸発、冷却、凝縮、廃熱回収など用途が広く、様々な分野の熱交換器として用いられている汎用タイプです。隔壁式には「多管式熱交換器(シェル&チューブ)」、「プレート式熱交換器」、「スパイラル式熱交換器」、「フィンチューブ式熱交換器」などの種類があります。
・直接接触方式
遮蔽物を用いず、高温・低温の流体の直接接触により熱交換をするタイプです。主にオフィスビルや商業施設の屋上に設置されている空調用の冷却塔やバロメトリックコンデンサーの熱交換器として用いられています。
この他にも「蓄熱式」、「液体連結間接式」などが存在します。
また構造によっても熱交換の方式が異なります。ここでは「多管式」、「プレート式」、「スパイラル式」の3つのタイプの方式の特徴を紹介します。
・多管式熱交換器
複数本の円管で構成され、対象の流体を円管の中に流しこむことで熱交換を行う熱交換器を指します。構造が大変シンプルなことから、最も古くから熱交換器として普及してきました。
・プレート式熱交換器
高温と低温流体が流れるプレートとを交互に設置して、熱交換を行う仕組みを指します。サイズや容量が小さいことから利用しやすく、また最も熱交換の効率が高い方法とされます。
・スパイラル式熱交換器
2種類の流体が混ざり合わないような渦巻き状の形で、2つの流体間で熱交換を行う仕組みです。多管式の交換器に比べ伝熱係数を大きくとれるため、小型化が可能となります。また、不純物が含まれる流体の熱交換に適しています。
熱交換器の効率を高める方法
熱交換器における利用効率を高めるためには、交換熱量がどのように求められるのかを理解することが大切です。交換熱量は、「伝熱面積」「伝熱効率(U値)」「対数平均温度差(LMTD)」の要素で決定され、以下のような算式で求めることが可能です。
交換熱量 = 伝熱面積 × 伝熱効率(U値) × 対数平均温度差(LMTD)
ここでは熱交換器の利用効率を定めるそれぞれの要素をふまえ、利用効率を高める方法を紹介します。
その1、伝熱面積を広げる
伝熱面積は、熱交換が行われる際に熱の伝わる素材の表面積を指します。この伝熱面積が大きければ、伝達される熱の総量が大きくなるわけですから、交換熱量についても大きくなります。実際には、熱交換器の管束の本数やプレートの数の増加により、伝熱面積を広げることが可能です。しかしながら伝熱面積が大きくなるにつれ、熱交換器の体積も大きくなります。設置場所の確保に注意が必要となります。
その2、伝熱効率を高める
伝熱効率は、機器全体で熱がどれほど伝わるかを表す指標を表します。総括伝熱係数(U値)とも呼ばれます。 熱交換器に用いられる素材または状態により熱の伝わり方が左右されますので、次にあげるいくつかの要点を踏まえ、U値を高める必要があります。
・熱伝導がしやすい材質を用いる
・熱交換器の壁面を薄く整形する
・伝熱面に付着する汚れを除去する
・伝熱面に凹凸にする
・流体の量を増やす
その3、対数平均温度差(LMTD)を上げる
対数平均温度差(LMTD: Logarithmic Mean Temperature Difference)は、熱交換器の中に流れる低温流体と高温流体との温度差の対数平均値を表します。熱交換の目的物質の温度差が大きければそれに比例して交換熱量が大きくなります。逆に冷却を行うときには、冷却媒体の温度に反比例して交換熱量は変化していきます。
まとめ
熱交換器には熱交換の対象となる物体や構造、さらには冷却媒体により、いくつかの種類が存在することがわかりました。また熱交換器の利用効率を高めるためには、「伝熱面積」「伝熱効率(U値)」「対数平均温度差(LMTD)」の3つの要素を操作することで実現可能です。
それぞれの熱交換器の性質や特徴を理解した上で、必要なものを適切に利用することが大切です。選定にあたっては、様々なタイプの熱交換器についてメリットとデメリットを把握した上で、経験値を持った選定が出来るか出来ないかによって、ランニングを含めた最適な提案かどうかが変わってくることから、熱交換器の専門会社への問合せをおすすめします。
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