2021.03.30

アルミの熱伝導率は?アルミ製熱交換器の特徴を解説

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アルミニウムは高い熱伝導率だけではなく多くの特徴を持っています。例えば軽量であることと加工のしやすさ、導電性の高さなど。

現在では生活用品のほとんどにアルミが使われています。軽く例を挙げるならパソコンや半導体、宇宙服や航空機、キッチン用品などです。また、アルミニウムには純アルミニウムとほかの元素を添加したアルミニウム合金、これらを人工的に酸化させたアルマイトがあります。

そして熱交換器は、ステンレスやチタンなどの素材でできているものが多いですが、アルミ製のものもあります。アルミ製熱交換器をステンレス製やチタン製の熱交換器と比べた場合に、熱伝導率の違いに着目して選ぶことが多いです。

今回の記事ではアルミニウムの熱伝導率について解説するとともに、アルミニウムの特徴と弱点、アルミ製熱交換器の特徴にもふれています。アルミニウムの熱伝導率や特徴を知りたい方にとって参考になれば幸いです。

熱伝導率とは

熱伝導率とは、熱が移動しやすいかどうかを物質ごとに数値化したものです。熱は温度が高いところから低い方へ移動するでしょう。しかし、熱の移動の仕方は一様ではありません。物質によって移動しやすいものとそうでないものがあります。

一般的に金属は熱伝導率が高めの傾向にあります。温度の高いところに金属を置くとすぐに熱くなり、逆に温度の低いところに置けばすぐに冷たくなるでしょう。

金属の中でも熱伝導率の数値はかなり差があり、ステンレス(SUS304)が16でチタンが17なのに対して、アルミは236とかなり高めです。鉄やニッケルなども、アルミほど高くはありません。鉄は67でニッケルは91です。また、金や銀、銅などアルミよりも熱伝導率が高い物質もあります。

熱伝導率は物質の状態によって異なる

熱伝導率は物質の状態によって異なります。以下にもっとも熱が伝わりやすい物質から順番に挙げました。

  1. 個体
  2. 液体
  3. 気体

熱がもっとも伝わりやすいのは個体、もっとも伝わりにくいのは気体です。

このことは、建造物の断熱性について考えるときに役立ちます。つまり、住宅や建物の断熱性を高めるのに必要なのは空気です。

アルミニウムの熱伝導率と熱容量

アルミニウムは高い熱伝導率と熱容量の小ささを持つ金属です。例えばアルミホイルをオーブンや火で加熱しても熱くなりにくいのは、熱伝導率の高さと熱容量が関係しています。

アルミニウムは熱伝導率が高く、一言でいえば熱しやすく冷めやすい性質です。そして熱容量とは物質が持つ熱を蓄えたり吸収したりする力のことで、熱容量が大きければ大きいほど発熱するために多くのエネルギーが必要です。

さらにアルミニウムの加工品であるアルミホイルは薄く、表面積が大きくなっており、熱が放出されやすくなっています。アルミホイルを加熱しても素手で触れられるのは、この2つの要素によるものです。

アルミニウムの特徴

アルミニウムの特徴を以下に8つ挙げました。これらはアルミ製熱交換器の特徴でもあると言えるのではないでしょうか。

軽量である

アルミは鉄や銅と比べて比重が軽く、軽量化やコンパクト化が求められる現代の製品のニーズに応えられる金属です。アルミはロケットや自動車、パソコンなど私たちの身の回りにあるほとんどの製品に使用されています。

強度が高い

アルミは比強度が高く、輸送機器にも用いられています。比強度とは、一言でいえば材料の強さを比重で割り出したものです。比強度は一般的に軽金属が高く、アルミニウムのほかにマグネシウムやチタンも含みます。

ただし純アルミニウムはやわらかく傷つきやすいため、マグネシウムや亜鉛を添加してアルミ合金にしたり加工や熱処理をおこなったりして硬度を高めます。

さびにくい

アルミニウムがさびにくいのは、表面を酸化皮膜が覆っているからです。さびや腐食を防ぐのに有効な酸化皮膜ですが、アルミ合金はさらに高い耐食性を持ち、強度もアルミニウムを上回ります。

加工しやすい

アルミはやわらかい金属のため、塑性加工(そせいかこう)しやすい特徴を持っています。塑性加工とは加工するものに力を加えて変形させ、特定の形状を作り上げることです。

また、他の金属と比べてチップやドリルなどの加工ツールが傷みにくく経済的でもあります。

導電性が高い

例えば単純な電気の伝導率でいえば銅のほうが勝りますが、銅と同じ重量のアルミニウムは銅の2倍の電流を通します。また、アルミニウムは銅よりも比重が軽く扱いやすいのです。

そのため、高電圧送電線のほとんどにアルミが使われており、従来の銅線のものもアルミに変わりつつあります。

無害である

アルミニウムは無毒かつ無害です。仮に何らかの化学作用で金属が溶け出したり化合物を作ったりしても、人体や土壌への影響はありません。アルミニウムが食品や医療品の包装、家庭用器物などに用いられているのはこのためです。

反射性に優れる

アルミニウムは光や熱を反射するのに優れ、純度が高いアルミニウムほど反射性が向上します。アルミニウムが反射する光は紫外線および赤外線、電磁波や各種熱線です。こうした性質は遮熱シート、ラジオのロッドアンテナ、宇宙服に利用されています。

リサイクル性が高い

アルミニウムのリサイクル性が高いのは、劣化しにくく融点が低いことが理由です。新たにアルミニウムを精錬するときの約3パーセントのエネルギーでリサイクルでき、そのクオリティーは新品と肩を並べます。

アルミニウムの種類

アルミニウムには3種類あり、それぞれに適した用途や特徴があります。

純アルミニウム

純アルミニウムはボーキサイトという鉱石から抽出した高純度のアルミニウムのことです。定義としては純度99%以上で構成されたものを指します。

ただし純アルミニウムはやわらかく傷つきやすいため、ほかの元素を添加して強度を高めたアルミニウム合金が20世紀の初めに開発されました。

アルミニウム合金

アルミニウム合金とは、アルミニウムにほかの元素を添加して耐食性や強度などを高めた金属です。添加する元素は銅やマンガンなどで、高い硬度を誇るジュラルミンもアルミニウム合金の一つです。

JISによって定められているアルミニウム合金の種類を以下にまとめました。

添加する元素と番手 特徴
アルミニウム+

(2000番手系)

ジュラルミンや超ジュラルミンも含む

強度は高いが耐食性と溶接性は低い

アルミニウム+マンガン

(3000番手系)

アルミ缶の材料として使われている

純アルミニウムよりもやや強度が高い

アルミニウム+シリコン

(4000番手系)

鋳造性と溶接性に優れる

鋳物用合金や溶接棒などに用いられる

アルミニウム+マグネシウム

(5000番手系)

強度と溶接性に優れたアルミ合金

船舶や車両などにも使われる

アルミニウム+マグネシウム+シリコン

(6000番手系)

強度が高く加工性と耐食性に優れる

建築用材や陸上構造物などに使用される

アルミニウム+亜鉛+マグネシウム

(7000番手系)

アルミ合金のなかで最高クラスの硬度と強度

超々ジュラルミンとも呼ばれる

アルマイト

アルミニウムもしくはアルミ合金を人工的に酸化させて不動態皮膜類を形成したものをアルマイトといい、この技術は日本で開発されました。アルミニウムとの違いは電気を通さないことです。また、熱伝導率も低くなります。

アルマイトは着色も可能なためインテリアや装飾品に用いられ、ほかにも台所用品や電車、航空機の部品、半導体部品など多岐に渡ります。

アルミニウムの弱点

アルミニウムの弱点は3つです。

鉄よりも強度が低い

アルミニウムはもともと高い強度を持ちますが、鉄やステンレスには劣ります。そのため、強度が必要な製品にアルミニウムは不向きです。単純にいってアルミニウムと同じ厚みの鉄の場合、その強度は3倍です。

製品の材料として軽さを求めるのであればアルミニウムもしくはアルミ合金を、強度が必要であれば鉄を選ぶようにしてください。

溶接しにくい

アルミニウムは溶接しにくく、高い技術が必要です。

そもそもアルミは融点が660℃と他の金属に比べて低く、熱によって溶けやすい性質を持っています。

また加熱によって表面が酸化すると酸化皮膜が生成され、スムーズな溶接が難しいのも原因の1つです。熱伝導率の高さもネックで、ゆがみが発生しやすいため溶接時間の短縮が求められます。

アルミニウムの溶接が難しいといわれているのはこうした事情によるものです。

鉄よりもコストがかかる

アルミニウム製のものを作るとき、場合によっては鉄よりもコストがかかります。例えば、厚みのあるものや大型の製品の場合は鉄やステンレスなど他の金属のほうがコストを抑えられます。

アルミニウムでの製作が適しているのは薄いものや小さな製品です。

コスト面に関しては、製作するものや使用用途などから多角的にみてふさわしい素材を選定してください。

アルミ製熱交換器の特徴

アルミは熱伝導率が高いことから、熱交換器の材質に使用すれば効率良く熱を運べるということになります。そのため、エアコンや空調設備などに使われている熱交換器はアルミ製であることが多いです。銅や銀などはアルミよりも熱伝導率が高いですが、重いうえに価格が高いのがネックになるでしょう。アルミは高い熱伝導率だけでなく、安価で軽いという好条件が揃っています。

しかし、用途によっては必ずしもアルミ製の熱交換器が良いとは限りません。工業用などの場合には、アルミ以外の材質の方が適している場合もあります。例えば、高温の環境下で使用される熱交換器は、アルミ製はそう多くありません。その主な理由は、アルミが高温の環境に弱いためです。

アルミは融点が約650度と金属の中では低めで、腐食のリスクなども考慮するとアルミを使えるのは400度くらいまででしょう。これに対して、鉄やニッケルは融点が1,500度前後なので高温の使用に向いています。

アルミ製熱交換器と熱伝導率

アルミ製の熱交換器の特徴を理解する上で、熱伝導率について知っておく必要があります。なぜならアルミニウムの特徴は熱伝導率が高く、放熱性にも優れていることだからです。

そもそも熱伝導率は素材によって左右されるため、放熱性の向上には熱伝導率の高い金属を使用することがポイントです。

例えばヒートシンクでは表面積を増やすような形のものを選ぶべきです。表面積だけではなく、放熱板の間隔も考慮してください。放熱板同士が近接していると熱の対流が滞り、放熱の効率が低下します。放熱板の主な形状は板状と蛇腹状、剣山状の3つです。

まとめ

アルミニウムは高い熱伝導率を持ち、熱しやすく冷めやすい性質を持つことからヒートシンクに採用されています。また、導電性の高さや軽さ、加工のしやすさなどといった利点から日常生活のあらゆるシーンで使われているほどメジャーな金属です。

ただし純アルミニウムはやわらかく傷つきやすいため、ほかの元素を添加して熱処理や加工を施したアルミニウム合金が生み出されました。アルミ合金はアルミニウムよりも硬度や耐食性に優れ、多くの分野で活用されています。

ただし、製品に強度を求める場合は鉄を選ぶべきです。アルミやアルミニウム合金が向いているのは軽さが求められるものや、薄いものなどです。

このように製品に使用する金属を選定するときは、コストや目的などから多角的に判断してください。

 

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