2021.07.16

マルチサイクロンとは?原理やメリットとデメリット、主な導入事例についても解説

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水中に含まれる異物や汚れなどを除去するためには装置が使われており、その中の1つとしてマルチサイクロンがあります。

マルチサイクロンとは、水専用サイクロン式汚れ回収装置です。フィルターを使わず、吸引力を長期間にわたって維持できるうえクリーンな排気で環境への配慮も実現できます。

サイクロン式汚れ回収装置を取り入れている施設として挙げられるのは、魚の養殖場や缶詰、食品工場やバイオマス発電などです。主に水処理設備に使われます。

今回の記事では、サイクロン式汚れ回収装置の原理やメリットとデメリットについて解説しています。合わせて、実際の導入事例についてもふれています。マルチサイクロン汚れ回収装置の導入を検討している方にとって、参考になれば幸いです。

マルチサイクロンとは

マルチサイクロンとは、水用フィルターの一種で、装置内部に水を取り込んで汚れや異物を分離させることができる装置であり、サイクロン式汚れ回収装置です。

主に工業用冷却水プール、温泉施設などの水質改善のために使用されています。

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サイクロン式の仕組み

サイクロン式は、平たくいえばフィルターを使わない汚れ回収装置のことです。入り口から入ったダストや汚れを、本体内で遠心力を起こして流体(空気や水)と汚れを分離させます。サイクロン内は円すい形になっており、ダストや汚れは円すい内で回転しながら回収用タンクの底面に落ち、きれいな空気や水のみが排出されます。フィルターを使わないサイクロン式の汚れ回収装置は、分離力を持続しながら使い続けられます。

マルチサイクロンの仕組み

マルチサイクロンの特徴は、遠心力を使って異物や汚れを分離する点です。装置の形状は円錐形で尖っている部分を下にして設置します。内部には、複数のサイクロンが設置されており、それらの中を遠心力で水が回ることにより分離処理をする仕組みです。

水はサイクロン上部から入り、尖った方から汚れが下方に分離され、汚れが取り除かれて綺麗になった水は上の方から外へ出ていきます。装置の下部にはタンクが設置されており、取り除かれた汚れが溜まるようになっています。マルチサイクロンで取り除くことができる汚れは、水よりも比重の重い汚れのみです。

サイクロン内が円すい形になっている理由

サイクロン内が円すい形になっているのは、強い遠心力を発生させるためです。

つまり、円すい内の直径が短くなっていくにつれて流体のスピードが加速し、小さなダストも分離できるようになります。円筒形の場合、流体のスピードが落ちると小さなダストは捕らえきれず排出されるため、工業や産業用には適していません。

超微細な粒子はフィルターと併用する

フィルターとはろ過式装置の1つです。超微細な粒子を除去する場合は、マルチサイクロンとフィルターを併用します。

フィルターはポリエステルやポリアミドなどが多く使われていますが、温度や流体に合わせた素材を使います。サイズや種類などが豊富なフィルターは用途に応じて柔軟に対応できるのがメリットです。

フィルターを使用するときは、除去する物質や対応の仕方によって適した製品が異なります。また、フィルターは定期的なメンテナンスが欠かせません。フィルターが目詰まりすると能力が低下し、破損や劣化につながることもあります。

マルチサイクロンによる汚れ除去のメリット

マルチサイクロンによる汚れ除去のメリットは主に3つです。

フィルターが不要

マルチサイクロン式の汚れ除去装置はフィルターを使いません。そのため、長期間にわたって分離能力を持続できるだけでなく、汚れを除去することによる環境配慮も実現します。現在、排気や排熱による環境汚染が問題視され、日本政府も対策に取り組んでいます。

こうした現状において、マルチサイクロン式の汚れ除去装置は環境配慮を意識している企業にとって積極的に取り入れるべき装置といえるはずです。

微細な汚れも分離して除去できる

マルチサイクロン式の汚れ除去装置は、微細な汚れも分離して除去できます。以下、主に除去できるものをピックアップしました。

  • 火山灰
  • ブラスト材
  • さびの粉
  • 切削ゴミ

このように、除去できるのはある程度の重さを持つ汚れです。水より軽く、小さな汚れはマルチサイクロンのみでは除去できません。

高温や高圧の環境でも使用できる

マルチサイクロン式の汚れ除去装置には、高温や高圧の環境で使用できる製品もあります。そのため、温泉施設や海水などの汚れも除去できます。ただし、あまりにも高温もしくは低温の環境には適していません。

マルチサイクロン式の汚れ除去は55度以下の環境で使用してください。

マルチサイクロンによる汚れ除去のデメリット

マルチサイクロンによる汚れ除去のデメリットは主に2つです。

超微細な粒子は分離できない

超微細な粒子は、マルチサイクロンのみでは分離できません。そもそも、サイクロン式汚れ除去装置は遠心力によってダストと空気を分離しています。そのため、ある程度の重さがある汚れであれば自重でダストボックスの底面に落ちていきます。

ですが、あまりにも小さく軽い汚れは遠心力が加わらず、流体と一緒に排出されてしまうのです。工場でマルチサイクロンが使われる場合は、フィルターと併用するケースが多くみられますがこれについては後述します。

圧力損失が大きい

サイクロン式の汚れ回収装置は、汚れと流体を分離するために大きなエネルギー(遠心力)が必要です。

ですが、エネルギーが大きければ大きいほど圧力損失が高まり、汚れが流体に混じって排出されやすくなります。この圧力損失を損なわない方法として、マルチサイクロン式があります。

マルチサイクロンの主な用途

マルチサイクロンによる汚れ回収装置が採用されているのは、主に以下の施設やシーンです。

魚の養殖場

魚の養殖場で省エネを実現するとき懸念されるのは、汚れによる魚への悪影響です。そのため、マルチサイクロンと合わせてグラスパールのろ過装置を設置することで、省エネと魚にとって快適な環境を両立させられます。

 グラスパールろ過装置の前にマルチサイクロンを設置して、比重のある大きな汚れを分離します。そしてグラスパールろ過装置によって水質を悪化する微細な汚れを防ぐという仕組みです。マルチサイクロンとろ過装置は海水や温泉水による腐食に強く、メンテナンスの手間を省けます。

食品および食品加工工場

食品関連でマルチサイクロンが活躍するのは、冷却水に混じる不純物の除去です。

 ある缶詰工場では冷却水に井戸水を使っていますが、井戸水に含まれる砂が冷却水に混入するため機器や配管のメンテナンスに手間とコストがかかっていました。

 ですがマルチサイクロン式汚れ回収装置を導入した結果、砂だけを分離できるようになり、コスト削減を実現できています。

まとめ

マルチサイクロンとは、複数の小型のサイクロンを並列にした汚れ回収装置です。

遠心力によって汚れと流体を分離したのち、きれいな流体のみを排出できる仕組みです。分離能力を長く維持でき、メンテナンスの手間を省けることからさまざまなシーンで活用されています。

超微細な粒子の除去には適していません。サイクロン式はダストの重みを利用するため、軽すぎると流体と一緒に排出されてしまいます。このようなケースはバグフィルターと併用して対応します。

クリーンな流体を実現できるマルチサイクロンは、環境問題への配慮が求められる業界、企業において導入を検討すべき装置です。実際に魚の養殖場や缶詰および食品工場やバイオマス発電など、多くのシーンで採用されています。

 

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