2023.11.08

冷媒とは?どのように働く?仕組みと種類を解説

冷媒とは?どのように働く?仕組みと種類を解説

冷媒は、熱エネルギーを運ぶ働きを持つ物質で、エアコンや冷蔵庫など身近な電気製品の熱交換器にも使われています。その特徴を知ることで、温度変換機能を持つ機器の仕組みを理解しやすくなるでしょう。

この記事では、冷媒の基本として、概要と特徴、エアコンでの働き、種類などを詳しく解説します。

冷媒とは?

冷媒とは、温度の高いところから低いところへ、熱を移動させるために使う物質の総称です。家庭で一般的に使われるエアコンや冷蔵庫でも用いられており、機器内を循環しながら温度変化を起こします。

冷媒として使用される物質にはいくつも種類があり、基本の形状は流体(気体と液体の総称)です。熱などのエネルギーを加えると変形する特性をもっており、液体が気体になるときは周囲から熱を奪い、気体が液体になるときは熱を放出します。

冷媒の歴史は古く、1748年にグラスゴー大学の研究者がエチルエーテルを真空容器内に噴出させ、人工的な方法で冷却を実現したことが始まりです。1805年には、冷媒を用いた最初の冷凍機がアメリカの発明家によって開発されました。

これらの開発の過程で、これまで冷媒にはさまざまな物質が使用されてきました。多くはフロンと呼ばれる、炭素、塩素、水素、フッ素原子からなる無害の化学物質です。しかし、フロン中に含まれる塩素原子が、成層圏のオゾン層を破壊することが分かり、オゾン層保護のため、一部のフロンの製造と使用が禁止されました。

現在の冷媒は、分子中に塩素を含まないフロン、ハイドロフルオロカーボン(HFC)が主に使用されています。

冷媒が温度を変化する仕組み

ここでは、冷媒が温度を変化する仕組みの例として、冷媒がエアコンで果たす役割と仕組みを紹介します。

そもそもエアコンは、部屋の熱を外に放出したり、外の熱を取り込んだりすることで、室内の冷房や暖房を実現しています。エアコンの室内機と室外機には熱交換器が使用されています。熱交換器とは、その名の通り「熱」を「交換」する機器です。そこに使われている冷媒が、室外機と室内機を循環し「冷媒とお部屋の空気の熱交換」「室外の空気と冷媒の熱交換」という2回の熱交換を行うことで室温を調整しています。

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例えば、エアコンの冷房運転において、冷媒は一般的に以下のような働きをします。この16を繰り返すことによって、室温を下げているのです。

  • 冷媒が、室外機から室内機へ送られる。
  • 蒸発>このときの冷媒は低圧低温状態で、室内の暖かい空気を吸収して蒸発する。これにより室内の空気が冷却される。
  • <圧縮>冷媒が圧縮機に送られ、高圧高温状態に圧縮される。これにより大量の熱を発生させる。
  • 凝縮>高温高圧の冷媒は室外機の凝縮器に送られ、室外の空気に熱を放出して液体に凝縮。これにより、冷媒から吸収した室内の熱が室外に排出される。
  • <膨張>液体の冷媒は膨張弁を通過するときに急激に膨張し、再び低圧低温状態に戻る。
  • 冷媒は再び室内機に戻る。

エアコン以外にも、同じような原理で冷却を行う機器は多くあります。例えば冷蔵庫は、主に圧縮機と2つの熱交換器からなる機器です。エアコンと同じように冷媒が冷蔵庫内を循環し、「冷媒と冷蔵庫内の空気の熱交換」「冷蔵庫外の空気と冷媒の熱交換」2回の熱交換を繰り返し、冷蔵庫内の冷却を可能にしています。

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冷媒の種類

これまで冷媒には、さまざまな種類の物質が使用されてきました。冷媒で使用されていた物質がオゾン層を破壊することが分かり、使用が禁止になったものも多数存在します。ここでは、過去に使用されていたものを含め冷媒の種類を説明します。

クロロフルオロカーボン

クロロフルオロカーボンは炭素・フッ素・塩素からなる物質で、フロンの一種です。CFCと呼ばれることもあり、地上では安定した化合物となります。

エアコンや冷蔵庫といった機器が発明されてから、長く冷媒として使用されてきました。ですが1974年アメリカ、カリフォルニア大学のローランド教授とモリナ博士が、クロロフルオロカーボンによるオゾン層破壊と人類や生態系への影響を指摘しました。

空気中に放出されたクロロフルオロカーボンは、成層圏まで上昇する性質を持ちます。成層圏に達したところで、太陽から届いた強い紫外線により破壊され、塩素原子を放出します。放出された塩素原子はオゾンと反応し、オゾン層を破壊します。クロロフルオロカーボンに限らず、他のオゾン層に影響を与える冷媒も同じメカニズムでオゾン層を破壊します。オゾン層が破壊されると、私たちが生活する地上に達する紫外線の照射量が増加し、生態系へ影響する可能性が考えられます。

ローランド教授らの指摘がきっかけとなり、1987年にモントリオール議定書で、クロロフルオロカーボンの生産中止と全面廃止の決定を受け、日本では、1988年に特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン保護法)が公布されています。フロンが使われなくなった代わりに、他の物質が冷媒として採用される機会が増えました。

ハイドロクロロフルオロカーボン

ハイドロクロロフルオロカーボンは、炭素・フッ素・塩素・水素からなる物質です。クロロフルオロカーボンの使用禁止に伴い、冷媒としてよく使われるようになりました。HCFCと表記され、当時は代替フロンとも呼ばれていました。

しかし、後にハイドロクロロフルオロカーボンも禁止の流れになりました。オゾン層破壊係数はクロロフルオロカーボンの10分の1から50分の1と影響は小さいものの、同じくオゾン層破壊の特性をもっていたのです。2020年にモントリオール議定書で使用が禁止され、特定フロンのひとつとして扱われるようになりました。

ハイドロフルオロカーボン

ハイドロフルオロカーボンは、フッ素と炭素の化合物(フルオロカーボン)の総称です。HFCと表記され、2024年現在に使われている冷媒の大半を占めます。オゾン層への影響は考えなくてもよいものの、地球温暖化への影響は懸念されています。

温室効果ガスの代表例として挙げられるのは二酸化炭素です。ハイドロフルオロカーボンの地球温暖化への影響は、二酸化炭素の数百倍から1万倍と言われており、温暖化に関する課題が議論されています。

ハイドロフルオロオレフィン

ハイドロフルオレフィンは、水素・フッ素・炭素からなる不飽和有機化合物で、有機フルオロカーボン化合物の一種です。HFOとも呼ばれ、現在冷媒として主流のハイドロフルオロカーボンにかわる物質と期待されています。

地球温暖化への影響はハイドロフルオロカーボンの約6分の1といわれ、オゾン層への影響も考える必要はありません。しかし、他の課題は残ります。まずは燃焼性があること、毒性があること、これまで冷媒として使用されてきた物質と比較すると効率がよくないこと。2024年現在、冷媒として使用されるケースは、まだ多くはありません。

まとめ

この記事では、冷媒について説明しました。冷媒は、エアコンや冷蔵庫といった身の回りの機器で使用されており、日常生活に欠かせないものです。

冷媒が機器の中を循環することで、室温を上げたり下げたりを実現し、いくつものの種類が存在します。現在、使用されている冷媒は、オゾン層への影響は考えなくてもよいですが、地球温暖化への影響が懸念されます。今後の研究開発が待たれる分野です。

 

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