水をきれいにする仕組みは?水質浄化の基本を解説
普段私たちが何気なく利用している水は、さまざまな仕組みを通して、安全に飲める・使えるよう工夫がされています。
その浄化方法は、利用する水の種類によっても異なります。用水ごとの違いが分かると、普段よく使う水道や用水などの見方が変わるかもしれません。
今回は、水をきれいにする仕組みを詳しくご紹介しましょう。
目次
水質浄化とは
水質浄化とは、水質が悪化している河川や湖沼・海域などの水域にある汚染物質を取り除き、水質の向上やその中で暮らす生き物が住みやすい環境を作る技術のことです。「水をきれいにする仕組み」と呼ぶこともできます。
私たちが普段いつでも安全な水が飲めるのは、この技術のおかげです。水質浄化にはさまざまな技術や道具が水質浄化に使われており、基本は専門の施設で複雑な処理をおこないます。
水をきれいにする仕組み
水質浄化の仕組みは大きく分けると3つに分類できます。それぞれの仕組みを解説しましょう。
物理学的処理
物理学的処理は、ろ過や沈殿・吸着などを行い、水の中に含まれる汚染物質や有害物質を取り除く処理方法です。多くの水質浄化施設・機器で採用されている仕組みで、家屋の下水道でも活用されています。
沈殿は、液に混じった固体が底に沈んで溜まることです。水質浄化では沈殿によって、水に含まれる大きなごみや砂を沈め取る形で分離します。
ろ過は、液に混じった固体を、ろ過材でこして分離することです。砂に水を通して汚れをこしとるほか、ろ過器と呼ばれる専門の装置を使うのも一般的となります。
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科学的処理
科学的処理は、紫外線やオゾンによる有害物質の分解や、科学的・電気的な浄化方法により水質を変化させる処理方法です。
ろ過によりゴミや有害物質を取り除いても、完全にきれいにできるわけではありません。特に、目に見えないほど小さい物質を取り除くにするには不十分です。そこで行われるのが、科学的処理となります。上下水道施設では水の殺菌に採用されることが多い仕組みです。
生物学的処理
生物学的処理は、生物を活用して分解や浄化を行う処理方法です。
河川や湖沼・海域の水は、物理的・科学的な方法にてきれいにされますが、これらに全く浄化作用がないわけではありません。水の中には微生物が多数含まれており、有害な物質を取り込むことで浄化されます。これが生物学的処理で、下記のような方法があります。
- 細菌によるアンモニア態窒素の分解
- 水生植物による浄化
- カキなどの貝類による浄化
水辺に生える植物の中には、汚れを吸着して沈殿させ水質を改善する効果をもつものがあります。植物は水中の生き物のエサや隠れ家としての役割も果たすため、水質改善だけでなく、生態系を育む役割も担っているといえるでしょう。
貝類のカキなどの生き物にも、浄化作用があります。現在は、閉鎖性海域など、水の流れがなく汚れやすい場所の浄化に活用されることが多いです。
上水道における水質浄化
私たちが普段使っている上下水道では、どのようなやり方できれいにしているのでしょうか。水をきれいにする技術の基本である、上水道の水質浄化を確認しましょう。
浄化の流れは施設によって異なり、例えば東京都水道局では、以下のような浄水処理を、組み合わせておこなっています。
- 急速ろ過:水中の異物や細菌などを薬品で処理し、沈殿させてから、急速でろ過池の砂層を通して浄化する。
- 高度浄水処理:オゾンや生物活性炭でにおいの元となる物質を除去する。
- 緩速ろ過:ろ過池の砂層をゆっくりと通し、生物ろ過膜で浄化する。
- 膜ろ過:ろ過膜を使ってろ過する。
河川からくみ取った原水には、上記の処置を水質に応じて行うほか、さらに様々な処置を組み合わせて水道水を作ります。きれいになった水は、送水管や配水池、配水管などの水道設備をとおして家庭や工場などへ送られます。
上水道では、この流れを繰り返すことで、水道に安全な水を送っているのです。
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工業用水の浄化について
工業用水の特徴と、上下水道とは異なる水質浄化技術について解説します。
水質浄化技術が用いられているのは、飲み水や下水だけではありません。工場で使われる工業用水にも用いられています。
工業用水とは
工業用水とは、文字通り工場で活用される水のことです。用途は異なりますが、多くの工場で以下のような目的で活用されています。
- 機械の冷却水
- 容器や製品の処理・洗浄
- 原材料
- 温調用水
- ボイラー用水
- 工場内部の清掃
工場のあらゆる場所で使われており、その中でも水源から工場内に引水される水を補給水と呼びます。工場内で使用された水を再利用する場合は、回収水と呼ばれ、区別されています。
工業用水と上下水道の処理の違い
家庭で使用されている上水は、口に含む可能性があるため徹底してろ過・殺菌されたものが共有されます。一方、工場用水は用途を見てわかるように、必ずしも体内に入ったり、触れたりするわけではありません。そのため、処理方法も異なります。
用途や供給事業によっても処理方法は異なりますが、通常は原水に沈殿処理だけしたものを使うことが多いです。とはいえ、用途にあわせて必要な処理を行う場合も当然あります。その場合、沈殿処理の後にろ過や高度処理を行ってから製造用水として使います。
また、食品工場の場合、工業用水は冷却水や工場内清掃などに使われるため、直接製品に工業用水が使われることはありません。
なお、上水道は基本河川などから取られた真水を使いますが、工業用水は異なります。用途上問題がなければ海水が使われることもあるのも、違いのひとつといえるでしょう。
上水道も工業用水も、河川から引き上げられる点は変わりません。しかし、用途や目的により、浄化処理の方法が大きく異なります。同じように使える水ではない点を覚えておきましょう。
他に水質浄化が使われる場面
水質浄化技術は、最初は飲み水や下水処理に使われていました。しかし、現在は公園や住宅地を流れる小川など、身近な場所にも活用されています。
例えば、公園の池に溜められた水は、ひとつのところにとどまっているため、どうしても汚れてしまいます。そのまま放置しておくと、嫌な臭いが発生したり、水が濁って景観を損なったりと、さまざまなトラブルが発生するのです。
これらのトラブルを避けるために、自治体やNPOが環境用水の導入を始めています。ヘドロの除去など、水域の掃除に加えて高度な処理をした水を加えることで、憩いの場や過ごしやすい場所づくりに役立っています。上下水道処理施設の中には、こうした環境用水を提供することで、事業のアピールを実施しているところもあります。
上下水道の浄化や工業用水の浄化とは違いますが、これも水質浄化技術の使用例のひとつです。
まとめ
水をきれいにする方法は、ひとつだけではありません。特に、私たちが普段口にすることが多い水は、さまざまな方法で浄化することで、安全に飲めるよう提供されています。同じ河川から取られた水でも、工業用水とは違う処理をしていることを覚えておきましょう。
ここで解説した処理方法は、たくさんある方法の中のほんの一部です。現在、従来の方法だけに頼らずさまざまな浄化方法が研究・考案されています。
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