2022.04.10

スパイラル式熱交換器とは?特徴や製品を紹介

工場を始めとした産業部門では、加熱、冷却、蒸発、冷蔵・冷凍など様々な熱供給用途で熱交換器が用いられています。そんな中で工場から排出される下水、処理済み廃液、汚泥など低温熱回収の熱交換器として古くから利用されているのが「スパイラル式熱交換器」です。ここではその特徴を紹介します。

 

スパイラル式熱交換器とは

スパイラル式熱交換器とは、2枚の伝熱板を螺旋状に巻き取って細長い流路を形成した低温排熱回収用の熱交換器です。用途上の特性から汚れにくくてコンパクトな設計が施されています。

主に製油所、石油化学工場、製紙工場、製鋼所、下水・廃水処理場などで低温の排熱回収用として使われることが多いです。

スパイラル式は「流体が渦巻流になって熱交換をすること」、「流路は断面積が広いく流体の流路通過距離が短いので、圧力損失が少なく高効率な熱交換をできること」などが特徴で、大きく分けて次のⅠ型とⅡ型に大別されます。

●Ⅰ型

高温液体と低温液体の熱交換を向流で行うタイプです。単一流路になっているので、流体の流路通過速度が速く、伝熱板に付着したスケール(流体に含まれている不純物、ゴミなど)を剥ぎ取る効果もあります。

●Ⅱ型

液体と気体の熱交換を行うタイプです。液体側の伝熱板は両端を固定し、気体側の伝熱板は無固定の構造になっており、軸流れと渦巻流れの2つの流路を形成しています。圧力損失が少ないので、100℃以下の真空蒸気など厳しい条件下の熱交換に適しています。

関連ページ:熱交換器とは何か?その基本的な仕組みと種類を紹介

 

スパイラル式熱交換器の特徴

スパイラル式熱交換器の特徴として、一般に次が挙げられます。

(1)フレキシブルなサイズ

スパイラル式熱交換器は、伝熱板の板幅と流路間隔を熱交換目的に基づき自由に設定できるので、設置場所に合わせた設計が容易です。また構造的にスケールが付着しにくくなっています。

(2)低温熱の容易な回収

スパイラル式熱交換器は、排熱回収用の2本のロールが搭載されているので、低温の排熱回収が容易です。

(3)長期間の連続運転

スパイラル式熱交換器の流路は矩形の長い「1バス構造」なので、スケールが付着しても剥離作用が働き伝熱効率の低下がほとんど起きず、多管式熱交換器と比べ長期間の連続運転が可能です。

(4)狭小な場所でも設置可能

スパイラル式熱交換器は多管式熱交換器に比べ伝熱効率が高いので、筐体を小型化でき、排水口などの狭小な場所でも設置可能です。したがって省エネ設備の省スペース化や配管工事のコストダウンも図れます。

 

 

スパイラル式熱交換器の製品

ここではスパイラル式熱交換機の製品をピックアップして紹介します。

アルファ・ラバル製スパイラル式熱交換器

アルファ・ラバル製スパイラル式熱交換器は、円筒形の筐体内に2本のスパイラル流路を搭載。2本の流路にそれぞれ高温流体と低温流体を流すことにより高効率の熱交換を実現。同時に筐体を円筒形にすることで筐体の小型化と設置面積の省スペース化を図っています。汚泥からの熱回収を始め、使用目的や条件に合わせたカスタマイズ設計にも対応しています。

■特徴

  • 汚れやすくて粘性が高い流体の熱交換における目詰まりリスクを最小化できるので、運転時間の長期化が可能
  • コンパクトな筐体設計により設置コストを節減
  • シェル&チューブ式熱交換器よりも2~3倍の熱効率により、排熱回収の増加と排熱廃棄ロスを節減
  • 伝熱板を筐体から取り外せるので点検・保守が容易

 

 

バイオガスプラント向けスパイラル熱交換器

バイオガスプラント向けスパイラル熱交換器は、左回転と右回転、回転方向が異なる伝熱板のモジュールを積み重ねることにより小型化を図った高効率のスパイラル式熱交換器です。液体が流れる流路の内面はサンドブラスト仕上げによる滑らかな表面で、螺旋状の流路の溝が独特の乱流を生み出し、スケールを付着しにくくし、長期間の高効率熱交換を可能にしています。またモジュールは1段ずつの積上げ構造なので、筐体からの取外しが可能で点検・保守が容易です。同製品は下水処理施設やバイオガスプラントでスラリー、スラッジ、有機性廃棄物、動植物残渣などの排熱回収に適しています。また伝熱板モジュールの溝を特殊コーティングすれば、食品加工工場でも排熱回収に用いることができます。

■特徴

  • 伝熱板は鉄より伝熱効率が高いアルミニュームを使用
  • 台形の断面を持つ螺旋状の溝により、特にスラッジ状の液体の場合は、独特の二次的な乱流が発生し、粒度が最大20mmの範囲内では高い熱交換効率を発揮
  • 構造体壁面からの高い熱伝導と乱流効果による高い熱伝達により、500-2500W/m2 Kの伝熱係数を実現

 

汚泥用スパイラル式熱交換器

汚泥用スパイラル式熱交換器は、繊維など多くの夾雑物を含んだ下水・屎尿処理場、食品加工・繊維・製紙工場などの廃水処理設備向けの熱交換器です。同製品の2本の流路はそれぞれ単一流路になっているので、汚泥を渦巻状に巻き上げながら流すことができ、汚泥による流路の閉塞が起きにくく、固形物の沈殿も発生しないので、流入した汚泥はすべて熱交換の出口から流出します。

■特徴

  • 1パス構造(単一流路)による自動洗浄機能搭載
  • 設置場所に合わせた筐体設計が可能
  • 点検・保守が容易

 

二重管式スパイラルホース

二重管の内管に、螺旋状のチタンフレキシブルチューブを採用した熱交換器です。折り曲げが自由なホース構造なので、生簀から養殖場、食品加工工場まで様々な場所の排熱回収用熱交換器として利用できます。

■特徴

  • フレキシブルチューブを採用しているので、直管式より大幅な小型化が可能
  • フレキシブルチューブの特性により手で自由に曲げられるので、設置場所に合わせた曲げ加工が可能
  • フレキシブルチューブの柔軟な構造により振動を吸収するので、トラックや漁船の生簀にも搭載可能
  • 内管の取外しが可能なので、熱交換器部の点検・保守が容易

 

 

まとめ

スパイラル式熱交換器は地味な存在ながら、省エネ推進の中核的熱交換器と言えます。排熱回収・利用と言うスパイラル式の役割を鑑みると、熱エネルギー供給が不安定な再生可能エネルギー利活用促進だけでは達成できない省エネの推進役として、今後ますますその重要性が増すと見られています。

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